ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

釘貫亨(1999.12)断定辞ナリの成立に関する補論:万葉集と宣命を資料として

釘貫亨(1999.12)「断定辞ナリの成立に関する補論:万葉集宣命を資料として」『日本語論究6 語彙と意味』和泉書院.

要点

  • 前稿(釘貫1999)の結論を踏まえ、ナリがニアリから分離する過程を具体的に推定する。
    • タリ・ナリはともに連体修飾に集中し、ニアリ・テアリは連体修飾の例を持たない。
    • これは、連体修飾の場合に例外なく縮約が生じた結果によるもので、
    • 奈良時代以前の近接する時期に成立した可能性が高いものと見る。
  • 続紀宣命において、
    • ニアリにはモノニアリの例が多く、ナリは第16詔初出で、ニアリと比べて相対的に少ない。
    • ニアリに、事態に対する話し手の判断表示(断定)の例がいくつもあり、
    • ナリには存在表示の例はない。
  • 万葉集において、
    • ナリのうち、連体修飾のナルには、宣命には見られなかった存在表示(場所格「家ナル妹」)の例が多い。
    • ニアリの連体修飾の例は極めて少ない。
    • 万葉集が「伝統的形式を保存する和歌集という文献の特殊性の故に、ニアリの語脈からナリが成立して行く過渡期の様相を良く示している。」
  • このとき、存在のナリから断定のナリへの移行の際の媒介となったのが、「事態の総合的な判断を断定的に聞き手に押し出す形式」である、モノニアリ・モノナリであったと考えられる。
    • これらの形式は、後期万葉に例が見られるが、和歌の典型的な表現ではないのでそれほど多くはなく、
    • 孝謙・称徳の儀礼的でない宣命に多く見られる。

雑記

  • 片手間でBERTいじってるけど、なんかできるようにならんかな