現代
大江元貴・居關友里子・鈴木彩香(2020.9)「日本語の左方転位構文はいつ,どのように使われるか?」『社会言語科学』23(1). 要点 多重文法モデル(具体的な言語使用環境ごとに異なる文法の存在を想定するモデル)に基づいて、左方転位構文の文法的位置付け…
高橋淑郎(2005.3)「大学講義を対象とした類型的文体分析の試み」中村明ほか編『表現と文体』明治書院. 要点 話し言葉・書き言葉という枠組みを超えて、討論との比較に基づいて、講義の言語的特徴を明らかにしたい。 講義と討論のコミュニケーション成立上…
金水敏(2012.11)「疑問文のスコープと助詞「か」「の」」『国語と国文学』89(11). 要点 前稿(近代語研究16、前記事)で未検討の問題について考える。 カの出現と働き/他の疑問詞との対比/「いったい」「だろう」、丁寧体がノの出現に与える効果 カの出…
野村剛史(2013.10)「通時態から共時態へ」『日本語学』32(12). 要点 ソシュールの「共時態の記述に通時態を持ち込んではならない」という立場は、受け入れ難く、共時態記述には通時的研究が不可欠であることを主張する。 以下、ノダ文を例に、共時態と通時…
野呂健一(2013.3)「「~わ~わ」構文の分析」『日本語文法』13(1). 要点 並列述語構文「~わ~わ」に以下の2種類を認めるとき、 V1わV2わ:雨には降られるわ、デートに遅刻するわ、… VわVわ:雨が降るわ降るわ 「V1わV2わ」は以下ような特徴を持ち(「交差…
中村真衣佳(2022.1)「コピュラの定義からみる日本語の断定の助動詞」『研究論集(北海道大学)』21. 要点 以下のコピュラの(純粋な)定義に基づくと、デアル・ダ・デスはコピュラの機能が希薄で、古代語のナリはコピュラの定義に近い 主語と(動詞以外の…
吉田茂晃(2007.2)「〈カラ〉と〈ノデ〉に関するノート」『山邊道』50 要点 永野の「カラ=主観/ノデ=客観」という図式を離れて、カラが原因理由全体、ノデに使用制限のあるということの解釈を行いたい カラが可能でノデが不可能な以下の用法は全て上の図…
小亀拓也(2021.3)「連体修飾節中に生起しにくい述語形式について」『間谷論集』15. 要点 連体修飾節の統語的制限についての三原(1995)の議論を定量的観点から再検討したい 「判断確定性が最高次である確言のムード表現は連体修飾節中に生起可能であり、…
幸松英恵(2015.2)「〈事情推量〉を表さないノダロウ:準体助詞ノを含む推量形式に見られる2種」『学習院大学国際研究教育機構研究年報』1 要点 ノダロウはこれまで〈事情推量〉を中心として論じられてきたが、そうでない、ダロウと可換ノダロウがある (彼…
宮崎和人(2019.4)「モダリティーの主観化について:〈必要〉を表す文の場合」澤田治美ほか編『場面と主体性・主観性』ひつじ書房 要点 否定条件形+イケナイ・ナラナイの複合的な形式と、その「省略形」について、その差異を明らかにしつつ、主観化の観点…
宮崎和人(2020.10)「可能表現の研究をめぐって」『国語と国文学』97(10) 要点 可能は(ヴォイスではなく)モダリティの範疇で記述すべきであることを主張し、特に以下の3点について考える 1点目、可能と実現について 可能はポテンシャル(彼はその曲を最後…
岡部嘉幸(2003.4)「ハズダとニチガイナイについて:両者の置き換えの可否を中心に」『日本語科学』13 要点 ハズダ・ニチガイナイの置き換えの可否を「判断の根拠の確かさ」に求める(ハズダは確か、ニチガイナイは不確か)ことがある(三宅1993)が、問題…
三宅知宏(1995.12)「「推量」について」『国語学』183 要点 推量という概念をめぐって、以下の3点について考える 過度に一般化された曖昧な「推量」の概念の明確化 「推量」概念を用いて説明される形式の限定 「推量」概念の「認識的モダリティ」体系内で…
高梨信乃(2019.11)「〈宣言・アナウンス〉の意志表現:書き言葉における「しよう」を中心に」『日本語/日本語教育研究』10 要点 「進行役がこれから行う行為を伝える意志表現」(宣言・アナウンス)があり、学習者が不自然な産出をすることがある 銀の匙…
高梨信乃(2017.11)「「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から」森山卓郎 ・三宅知宏(編)『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版 要点 しようと思う/しようと思っている/つもりだ の3形式を、BCCWJにおける使用実態…
瀬楽亨(2019.11)「機能的談話文法における日本語の文法記述に向けて」『日本語文學 (Journal of the Society of Japanese Language and Literature, Japanology)』87 要点 機能的談話文法(FDG)の日本語への適用を考える FDGのコミュニケーションモデルは…
衣畑智秀(2005.4)「日本語の「逆接」の接続助詞について:情報の質と処理単位を軸に」『日本語科学』17 要点 ノニ・ケド・テモを適切に記述するための枠組みを考えたい 従来説はノニの「予想」とケド・テモの「予想」の差異を説明し得ない 以下の概念を導…
衣畑智秀(2001.12)「いわゆる「逆接」を表すノニについて:語用論的意味の語彙化」『待兼山論叢 文学篇』35 要点 ノニとケドの差異2点に対する説明は「逆接」のカテゴリーでは十分に行えない 違和感・意外感 後件が既実現:雪が降っている{けど/*のに}…
堀川智也(1994.11)「文の階層構造を考えることの意味」『日本語・日本文化研究』4 要点 南のA~Dの分類は混質的で、各類の要素も「本質的な同質性を持ってまとまっているのではない」 従属節の従属度を本質的に考えるため、A類のテとナガラについて考える …
松田真希子(2000.11)「ナガラ節の状態修飾性をめぐって」『日本語・日本文化研究』10 要点 ナガラ節の用法について、 従来「付帯状況」とされてきたナガラ節に付帯と並立が存する 付帯:ボールを走りながら取った 並立:音楽学校に通いながら個人レッスン…
森山卓郎(2013.6)「因果関係の複文と意志的制御」『国文学研究』170 要点 因果が成り立っていても不自然な場合があることを手がかりに、因果関係と意志の関係について考える 1 *私は、砂糖を減らした{ので・から}クッキーをあっさりと仕上げた。 2 私は…
笹井香(2006.1)「現代語の感動文の構造:「なんと」型感動文の構造をめぐって」『日本語の研究』2(1) 要点 これまでの感動文の研究の中心はいわゆる感動喚体句(「きれいな花!」以下A型)であり、「なんと~だろう」型(以下B型)は周辺的位置づけであっ…
澤田淳・澤田治(2020.3)「「NPのことだ(から)」の因果的推論の方向性」『日本語文法』20(1) 要点 「NPのことだ(から)」は後続命題を推論する用法を持つ 太郎のこと{だ。/だから、}この時期忙しいだろう。 絵が上手な太郎{だ/??のことだから}これ…
井上直美(2020.4)「「彼は笑ってみせた。」は何を見せたか:書きことばの「てみせた。」の意味機能に注目して」『日本語の研究』16(1) 要点 テミセタを補助動詞として認め、文末の「てみせた。」の主語の人称、共起動詞、何を見せたかに注目し、その多義性…
大江元貴(2017.12)「間投助詞の位置づけの再検討:終助詞との比較を通して」 pragmatics.gr.jp 要点 間投助詞と終助詞の違いと、間投助詞の位置付けについて考えたい 近年は終助詞と間投助詞の区別を認めない立場が優勢である 共通性は認識されているが、…
吉井健(2015.11)「現代語の「~かねる」覚書」『日本言語文化研究』20 要点 現代語で不可能を表すカネルの前接動詞を考える 前接動詞は、判断・認識に関わる動詞が多く、 A1 判断するなどの認識・判断 A2 賛成するなどの相手の意に添う意 B 発話動詞 言う、…
榎原実香(2018.9)「文の階層構造からみたモの周辺的用法の分類」『日本語文法』18-2 要点 周辺的なモの統語論的位置付け 周辺的なモ 基本的なモ 太郎は大学生です。わたしも大学生です。 大学生={わたし、太郎、花子} 累加性の見られない、周辺的なモ …
尾上圭介(1983.10)「不定語の語性と用法」渡辺実編『副用語の研究』明治書院 前提 不定語の語性に「(その物なら物、人なら人、数なら数の)内容が不明、不定であること」という不明性・不定性を求める 「だれか」「なにか」のような不定称者指示を「不定…
森山卓郎(2017.11)「意志性の諸相と「ておく」「てみる」」森山卓郎・三宅知宏編『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版 要点 「意志性」の語彙的意味について、事態のあり方に応じた整理を提示し、 無意志的事態とテオク・テミルとの結びつきについて、…
三宅知宏(2015.11)「日本語の「補助動詞」と「文法化」・「構文」」秋元実治・青木博史・前田満『日英語の文法化と構文化』ひつじ書房 要点 三宅(2015)の続き 特に構文スキーマの観点による、補助動詞の分析の有効性を示す 前提 前稿では補助動詞の分析…