瀬楽亨(2019.11)機能的談話文法における日本語の文法記述に向けて
要点
- 機能的談話文法(FDG)の日本語への適用を考える
- FDGのコミュニケーションモデルは以下の4つの部門から成る
- 概念部門(Conceptual Component): 伝達意図(試験は赤点だったようです)
- 文脈部門(Contextual Component): 発話状況や会話参与者の社会関係など(あそこの彼[←男性であるから選択されている]、ごきげんだね)
- 文法部門(Grammatical Component)
- 出力部門(Output Component)
- 文法部門は以下の4つのレベルに分かれる
- (1)対人レベル/(2)表示レベル/(3)形態統語レベル/(4)音韻レベル
- 各レベルの表示は上位レベルの表示をもとに構築される
- このうち、「対人レベル」の概念の有効性について考える。対人レベルは以下の4つの階層と<単位(unit)>を持ち、単位の情報はhead, modifier, operatorから構成される
- 第一の階層:<ムーブ>(Move, 問いかけ・応答)
- 第二の階層:<談話行為>(Discourse Act)
- 第三の階層:<発話内行為>(Illocutionary Act)、<会話参与者>(Speech Participant)、<伝達内容>(Communicated Content)
- 第四の階層:<帰属的な下位行為>(Ascriptive Subact)、<指示的な下位行為>(Referential Subact)
- 対人レベルでの記述が見込まれる現象として、
- <ムーブ>の層構造では、「要点をまとめると」が<ムーブ>に、「要するに」が<ムーブ>の主部である<談話行為>に関わるという基準で区別することができ、
- <談話行為>の層構造では、「17日だっけ?」「に、なんかライブが~」のような格助詞の非規範的な使用が<談話行為>に寄与する表現として捉えられ、
- <発話内行為>の層構造では、「〜系」や「〜ぽい」などの「ぼかし」が、発話ない行為を弱める手段として指摘でき、
- <下位行為>の層構造では、「激しく」の正確性指標としての用法(激しく正解でした)を<帰属的な下位行為>として記述できる
- (詳しい議論は元論文参照)
- (4節は層構造の形式化について)
雑記
- 変化の記述にFDGが有効なんじゃないかと思う…夏休みだし勉強してみようかな
- …と思い、しばらく一日一本ペースをやめて一記事に Kees Hengebeld 2008 FDG~ のことを書いていこうかなと思って今更気づいたのですが、
- そもそも論文を要約(して紹介?)するのって法的にOKなんか?
- うーん……