小田勝(1994.7)接続句の制約からみた中古助動詞の分類
小田勝(1994.7)「接続句の制約からみた中古助動詞の分類」『國學院雑誌』95-7
要点
- 小田(1990)の修正と、それに基づく助動詞の階層的分類
前提
- 接続句中の助動詞の出現の制限は文の階層性を反映するものである
- 小田(1990)を一部改訂して示す
- A-Cは北原の分類
- Ⅰ・Ⅱは中西宇一の分類で、
- Ⅰは「ず」に上接
- Ⅱは「ず」に下接
- 「き→つつ×」は「*~きつつ」、「き→未ば○」は「~せば」を示す
階層性
第1層(ツツのみを承ける領域)
- 「ざりつつ」「なかりつつ」から分かるように、「ツツ」は形容詞性の述語には付かない
- 「す・さす・る・らる」は、判断以前の述語句本体である必要があり、これらは格の支配にかかわるレベルで動詞句を作るもの
第2層(テも承ける領域)
- 広い意味での形容詞文を作る範疇
- 連体ナリ(主題と関係する述語成分の構成)、ベシ・マジ(様態)、マホシ(感情形容詞文)
第2~4層
- 客観的表現にあずかる助動詞が並ぶ
- 未然形バによる仮定条件に対し、推量が起きない(未然形バで承けることができる)ことは自然
- 2・3は連体ナリ・ズに上接する一方、第4層の「き」は連体ナリに上接、ズに下接することで特異。この範疇はテンスを表すものと言える
- *書いたても/書いたならば
- 書かなかった/*書いたない
第3層は、「て」に上接し難い範疇で、否定とアスペクトが並ぶ
- ただし、否定の場合は「ずして」「で」が存するために「ず+て」が少ないもので、性質は異なる
客観的助動詞群の中で、「まほし」は「とも」と承接しない点で特異
第5・6層
- 第5層まで(けり・めり・終止なり・まし)は已バの接続できる範囲
- 已バは既定的なので、助動詞も論理の前提となる確定性の高い判断を示す
- 第6層まで(む・らむ・けむ)はド・ドモの接続できる範囲
- こちらは高山善行の「想定性」に相当する
- 両者は合わせて叙法を表す領域と考える