ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

黄孝善(2020.3)近世江戸語終助詞の階層性と体系

黄孝善(2020.3)「近世江戸語終助詞の階層性と体系」『国語学研究』59

要点

  • 標記の問題について、田野村1994が以下の分類を試みているが、説明できないものがある
    • ワ(A)+サ(A)の処理の問題、ヤサ・ヤイの例があることなど

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p.415

  • 承接順序を示すと以下の通り、
    • カ+イ・エ・サ・ス・ナ・ネ・ノ・ヤ・ヨ
    • ワ+イ・エ・サ・ス・ナ・ネ・ノ・ヤ・ヨ…
    • としていくと、次のように整理でき、

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p.424

  • 以下の3類に分けられる
    • A:カ・ゾ・ワ・ゼ
    • B:ヤ・サ・イ・ヨ・ナ
    • C:ネ・エ・ノ・ス
    • ただし、ヤはイ・ヨが後接し、ナはヤ・ヨ・サに後接するので、

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p.425

  • この承接順はそれぞれの終助詞の基本的意味と関係する*1
    • A類は(話し手による)「新しい認識」を示すこと
      • ゾ:新情報の伝達と認識の要求
      • ワ:話し手の状況と想定とのギャップ
      • ゼ:話し手の状況に対する非難・マイナス評価
    • B類は「情報が自分側にあるものとして示す」こと
    • C類は「情報をまだ受けいれてないことを示す」こと

雑記

  • 国語学研究59、めちゃ気合い入ってる

*1:これは各類の共通項を取り出しただけで、この階層になる理由が示せてなくて惜しいと思う、承接の仕方そのものは中野1990みたいにオートマトンっぽく想定した方がいい気がする(例えばカ+スとか言わんし)