ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

幸松英恵(2015.2)〈事情推量〉を表さないノダロウ:準体助詞ノを含む推量形式に見られる2種

幸松英恵(2015.2)「〈事情推量〉を表さないノダロウ:準体助詞ノを含む推量形式に見られる2種」『学習院大学国際研究教育機構研究年報』1

要点

  • ノダロウはこれまで〈事情推量〉を中心として論じられてきたが、そうでない、ダロウと可換ノダロウがある
    • (彼女は今、)寝巻のまま受話器を握りしめているのだろう
  • こうした、事情推量を表さないノダロウは、
    • 所与の事情を推量しているのではないという点でダロウと共通するが、
    • 既に定まったこととして推量する点ではダロウと異なる
  • ダロウ・ノダロウには時制上の偏りがあり、
    • ダロウは現在・未来の推量に偏り、
    • 事情推量を表す通常のノダロウは現在・過去に偏り、
    • 事情推量を表さないノダロウは、ダロウ同様、現在・未来の推量に偏る(すなわち、形式ではなく、意味に起因する差異である)
  • この、事情推量を表さないノダロウを、既定事態推量のノダロウとするとき、この2者の関係をどのように考えるべきだろうか?
  • ノダ・ノダロウの歴史を概観すると、ノダの定着に伴い、ノダロウにノ+ダロウ→ノダロウ(事情推量)という推移が観察され(鶴橋2013)、これはいずれも主題-解説という構造を取り続けているものの、
  • 本稿で扱った既定事態推量のノダロウにはこの題述恒常が見られない
    • すなわち、「〈既定事態推量〉のノダロウとは,ノダの発生・発達に引っ張られるかたちで発展を遂げてきた〈事情推量〉のノダロウとは,異なるルートを辿った形式なのだろうと考えざるを得ない。事情を説明するノダの推量形ではない,別形式ということである。」
    • この、事情説明的なノダとそうでないノ系列があるという指摘がノデハナイカにもある(宮崎2002、事情を表さないノデハナイカ、ノダの「空用」「流用」)

雑記