福田嘉一郎(2000.3)天草本平家物語の助動詞ラウ
福田嘉一郎(2000.3)「天草本平家物語の助動詞ラウ」『国文研究(熊本女子大学)』45
要点
- 原拠本との天草版との比較により、室町のラウの意味や機能について考える
- 天草版のラウは原拠本では、
- ラウの場合:ラムの他、ムズラム、ツラム、ケムで、前接語は存在動詞と思考動詞に偏る
- ウズラウの場合:ラム、ムズラム、ム、ナムズ
- ツラウの場合:ラム、ツラム、タルラム、ケム、タリケム
- 覚一本のラムは天草版では、
- ラム>ラウ、ムズラム>ウ・ウズ・ウズル
- 益岡1991の「存在判断型」の「断定保留」(ダロウ相当)を「事態存在の推量」、「叙述様式判断型」の「断定保留」(ノダロウ相当)を「叙述様式適正の推量」とすると、
- 天草版には「叙述様式適正」(ノダロウ相当)のラウがあり、モノデアラウがこれと交替していったと考えられる
- 成親卿のござる所をわれに知らせまいとてこそ申すらうとて
- まとめ*1
- 存在動詞・思考動詞が前接し、コソの結びに用いられるラウが大多数で、これはラムの現在推量の意味を受け継いだ「最後の姿」
- そうでない場合には原則的にノダロウ相当の推量を表し、モノデ・モノヂャアラウはこれと交替していく形式であった蓋然性が高い
- 天草版のツラウはタダロウ・タノダロウの区別なく表し、近松にも現れる
雑記
- 理系猿、ほんまに猿で笑う
*1:本文に書いてないことがめちゃ書いてある