金銀珠(2019.11)上代日本語の助詞「が」の機能について
金銀珠(2019.11)「上代日本語の助詞「が」の機能について」『Trans/Actions』4.
要点
- 上代語で主語を表すガが、「ある対象を指示し、事柄把握の中心に置く」指示機能を持つことを主張する
調査と分析
- 上代のガを以下の4種類に分類すると、
- A 人称代名詞・固有名詞・親族名詞など、対象を直接的に示す語*1
- B 連体修飾を伴う名詞:過ぎにし子ら
- C1:連体修飾を伴わない有生物名詞:畑子ら
- C2:連体修飾を伴わない有生物以外の名詞:雛、日
- Aの例数が3/4程度*2と多く、対象を連体修飾で限定するBもあるのに対して、Cは少ない
- Cの場合も、示す対象が他の事物と対比されており、「前接語に注目したすい状態になっている」
- 以上より、ガは「前接語に注目を置くことをその機能としていた」と考える
- ある対象を指示し、事柄把握の中心に置く機能。「が」の指示機能は、世界をどう認識し何を中心にして言語表現するかという統語構造のレベルの機能*3
- 感情形容詞を述語に取る際のガの前接語と述語との間には独立性があり(例えば、「思ひわぶらむ妹が悲しさ」は妹の悲しさではなく、詠み手の悲しさ)、これもガの上の機能から来るものと考えられる
雑記
- いけてる