ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山田昌裕(2022.3)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて

山田昌裕(2022.3)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて」『論究日本近代語第2集』勉誠出版.

要点

  • 17C以降、格助詞ガの上接語が名詞句以外に拡張することを主張する
    • 17C以降に、テ節・引用句を、
      • ひえてしとをしてがよからふ(醒睡笑)
      • 何かわいそうがいるものか(春色梅児誉美
    • 18Cに連体詞・副詞・テカラ節などをとるようになり、
    • 「主語表示機能を捨て、上接語を強調するために挿入された「ガ」」(「統語上取り除くことができる「ガ」」)や、
      • 私からがいはずにゐませふか(傾城禁短気)*1
    • 「複合助辞の一部に強調として組み込まれた「ガ」」もある
      • 本人からしてが、何物だかほとんど要領を得ない(夏目漱石・坑夫)
      • ~の念を~覚えたのは、この点についてが最も強かった(文章世界14-4)*2

p.56

雑記

  • こういうのずっと見ちゃう

www.youtube.com

*1:「統語上取り除くことができるという点で、統語的機能を担っているものではなく、上接の語句を強調するために使われていると思われる。」とあるが、取り除けることと、統語的機能を担わない(そもそも、統語的機能を担わないとは?)ことは等価でOKなんだろか?あと、仮にその機能が「強調」だとして(「強調」とは?)、なんでガなんだろか?

*2:これはガが「余剰」ではない例だから主張に合わないとは思うけど、複合辞が分裂文を取る例(~のは~についてだ)って遅かったりするのかな?