高山善行(2021.6)連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して
高山善行(2021.6)「連体「なり」の機能をどう捉えるか:「のだ」との比較を通して」野田尚史・小田勝(編)『日本語の歴史的対照文法』和泉書院.
要点
- ノダとの比較に基づき、連体ナリの記述分析を行い、以下の3点を主張する*1
- 連体ナリの性質はノダとの用法比較によって顕在化する
- 連体ナリはモーダルのスコープを拡張し、モダリティ形式と節連鎖を繋ぐ機能を持つ
- 連体ナリの性質は形容詞カリ活用との共通点が多い
- 従来指摘されてきた連体ナリとノダの共通点と相違点、
- このうち、ノデハナイ、ノ(カ)?については、ナリの用法の欠如をニアリが補完する
- ナリは複合用法が多く、モダリティ形式の後接も多い
- 連体ナリの分析は「SハPナリ」を前提とするのが一般的だが、実際には(Sハが現れない)節連鎖の例が多い
- 節連鎖を対照とした分析のために南の4段階を導入し、ナリの先行部分を見ると、現代語のスコープのノダと同じ性質が観察される
- 節としては現代語のA類・B類相当のもの(テ・トテ・ニヨリテ)で理由を示す
- 表現としては、事態の現実性・現場性を表すもの(指示副詞・程度副詞・アスペクト形式)
- モダリティと複合するとき、連体ナリは(狭いスコープしか持たない)モダリティ形式のスコープを拡張する機能を持つ
- メリ単独で因果関係を表す節連鎖を対象とすることはないが、ナリと複合すると、
- なよなよとして、我にもあらぬさまなれば、いといたく若びたる人にて、物にけどられぬるなめりと、せむ方なき心地したまふ。(源氏)
- この「節連鎖とモダリティ形式を繋ぐ機能」はカリ活用と類似する
雑記
- この論集、それぞれの論文自体はもちろん面白いけど、現代語プロパーの人にもっと書いてほしかったな~という印象あり
*1:「多様な観点から研究がなされており、文法史研究の重要なテーマといえる。しかしながら、本質理解には至っていないのが現状である」、さすがに不誠実じゃないかな(少なくとも野村2019との差分は示すべきでは)。田野村・野田・益岡・名嶋を挙げて、まとめて「先行研究に依拠する」とするのもざっぱすぎんかな。