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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

西山猛(2005.12)古代漢語における場所を表す疑問代名詞の歴史的変遷

西山猛(2005.12)「古代漢語における場所を表す疑問代名詞の歴史的変遷」『中国文学論集』34.

要点

  • 疑問代名詞のうち、場所を表すものにどのようなものがあるか、資料論的検討を含めて行う。
    • 甲骨文・金文・『書経』は「太古漢語」として古代漢語の枠組みから除き、さらに、出土資料と漢訳仏典を除いた上で、春秋戦国期以降の『論語』をはじめとする文献を古代漢語の資料とする。
  • 上古漢語(春秋戦国期、『論語』 『孟子』『荀子』『韓非子』『春秋左氏傳』『國語』を資料とする)には、
    • 「焉」「奚」「惡」 の例があるが、例えば「焉」自体が場所を表すわけではないように、場所専用の疑問形式はなく、
    • 「何」字が特に後代でも広く使用されるようになる。
  • 漢代では、例えば戦国期の『佐伝』、劉向『説苑』 などに、「何之」が見られる。
    • 史記』は時代の取り扱いが問題となるが、そのうち、司馬遷と時代の近い部分(『史記』秦漢部分)は、語学的にも前漢に近いものとして取り扱えるのではないか。
      • 「何之」などの「何」の前置に、「何所」も新たに見られる。
    • 後漢においても『漢書』には「何所」がないが、王充『論衡』 にはそれが見られる。
  • 魏晋南北朝でも「何處」という新たな形式が見られ、
  • 初唐の『遊仙窟』までは積極的に用いられていたようである。
  • 近代漢文においては敦煌漢文において別の「何所在」「甚処」「那裏」などの形式が現れ、その後、「那裡」に収束していったと考えられる。

雑記

  • 何を引けば何が言えるのかを学びたい