ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

高宮幸乃(2005.6)格助詞を伴わないカの間接疑問文について

高宮幸乃(2005.6)「格助詞を伴わないカの間接疑問文について」『三重大学日本語学文学』16

前記事の続き

hjl.hatenablog.com

要点

ヤラより後発的なカの間接疑問文のうち、格助詞を伴わないものについて

  • 私は何人がパーティーに出席したのか覚えていない

歴史的に

  • 室町頃から用いられる
    • 上に産んだか下に産んだか存ぜぬ。(エソポ)

構文的な分類

  • 間接疑問のタイプから見ると
    • 肯否のカドウカは江戸後期以降に見られ、不定詞も少し遅い
      • 不定詞:何とあらうか、知らねども(天草平家[1592])
      • 選択:カヨウカヽヨハヌカ知レヌソ(蒙求抄[1535頃])
      • 肯否カ:内に御ざ有かぞんぜぬが(虎明本[1642写])
      • 肯否カドウカ:久しいのだから利かどふかしれねへす。(深川新話[1779])

主節述語による分類

  • 主節述語のタイプから見ると
    • 室町・江戸では未決・対処のみで、既決が現れない
      • 未決:何が起こるか分からなかった
      • 対処:どうしたらいいか考えた
      • 既決:何が起こるのか分かっていた

文型による分類

  • 文型から見ると
    • 室町、江戸ではQV型に限られ、SQV、QSVが見られない
      • (S)私は(Q)何人がパーティーに出席したのか(V)覚えていない
      • (Q)何人がパーティーに出席したのか(S)私は(V)覚えていない
      • (Q)何人がパーティーに出席したのか(V)覚えていない
    • 独立性がある程度高いと位置付けられる

成立前史として、

  • 注3(p.25)が注目される

間接疑問文以前は、次のような間接疑問文に似た表現が用いられたと考えられる。

和文資料では、引用のト(モ)、注釈句による表現となる。

訓点資料では、トイウコトヲという形を用いる表現となる。

和漢混清文ではト(モ)、トイウ名詞ヲ、注釈句を用いる表現となる。

気になること

  • 一人称主語が顕在化しないのは間接疑問に限った話ではないので、QV→SQV/QV→QSVという見方にはまだ検討の余地があるか