ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中世後期

妙摩光代(1979.8)『中華若木詩抄』に見る文末の「也」と「ソ」

妙摩光代(1979.8)「『中華若木詩抄』に見る文末の「也」と「ソ」」『田邊博士古稀記念国語助詞助動詞論叢』桜楓社. 要点 中華若木詩抄のナリ・ゾについて、以下の特徴を得た 先行論が博士家系を対象とすること、中華若木詩抄が単純な聞書でない(手控的性…

坂詰力治(1972.9)清原宣賢講『論語抄』における文末表現について:指定辞「ゾ」「ナリ」を中心として

坂詰力治(1972.9)「清原宣賢講『論語抄』における文末表現について:指定辞「ゾ」「ナリ」を中心として」『国語学研究』11. 要点 論語抄(宣賢抄)と論語聴塵におけるゾ・ナリについて、 聴塵においては文はナリもしくは動詞・助動詞で終止するが、抄にお…

中川祐治(2001.3)中世末期における指定辞「ぢゃ」の構文的機能について:『天草版平家物語』と原拠本『平家物語』との比較を手がかりに

中川祐治(2001.3)「中世末期における指定辞「ぢゃ」の構文的機能について:『天草版平家物語』と原拠本『平家物語』との比較を手がかりに」『国文学攷』169. 要点 平家の対照に基づいて、ヂャの機能について考える ヂャは登場人物の会話・心情、喜一の相づ…

中川祐治(2004.3)「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに

中川祐治(2004.3)「「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに」『文学・語学』178. 要点 大野(1993)の「副詞表現の発達が係り結びの衰退の要因となった」という指摘…

八坂尚美(2022.3)『虎明本狂言』と『狂言六義』における行為要求表現の対照

八坂尚美(2022.3)「『虎明本狂言』と『狂言六義』における行為要求表現の対照」『論究日本近代語第2集』勉誠出版. 要点 虎明本と天理本(狂言六義)に現れる行為要求表現について、対応する箇所を持つ例を、直接的か(命令形)間接的か(疑問、引用…)によ…

矢島正浩(1996.3)「疑問表現+しらぬ」の表現:近世前・中期の狂言台本を資料として

矢島正浩(1996.3)「「疑問表現+しらぬ」の表現:近世前・中期の狂言台本を資料として」『国語学研究』35. 要点 近世前・中期の狂言台本に見られる「疑問表現+しらぬ」について、以下3点を主張 ① 形式としては、内容的疑問(Wh疑問)の場合に、ゾを伴う→…

湯澤幸吉郎3部作のややこしい書誌情報

ややこしいのでメモしておく。 『室町時代言語の研究』 昭和4(1929)室町時代の言語研究:抄物の語法 大岡山書店 書名に誤りがあり、『室町時代言語の研究』が正しい 湯沢(1929)を『室町時代の言語研究』として引いて、再版を『室町時代言語の研究』とし…

山本佐和子(2020.3)中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考

山本佐和子(2020.3)「中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考」『同志社国文学』92. 要点 ゲナが「本体把握」「内実推定・原因推定」を主張し、ゲナリとの関係性からその意味が生まれる理由を考えたい cf. 大鹿1993, …

山田潔(2021.5)抄物における助動詞「べし」の変容:『毛詩聴塵』『両足院本毛詩抄』の本文比較

山田潔(2021.5)「抄物における助動詞「べし」の変容:『毛詩聴塵』『両足院本毛詩抄』の本文比較」『国語国文』90(5) 要点 川村(1995, 1996)の分類にしたがって、毛詩聴塵のベシの両足院本での使用状況を分類する A 観念上の事態成立主張用法 A1 現実世…

出雲朝子(1993.7)『玉塵抄』の会話文:文末の形について

出雲朝子(1993.7)「『玉塵抄』の会話文:文末の形について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂. 標記の問題について、会話文を以下のように分類 A 原漢文に該当する会話部があるもの 1 終結部が明示されている(「~」ト云) 2 明示されていな…

永田里美(2000.8)勧誘表現「~マイカ」の衰退:狂言台本を資料として

永田里美(2000.8)「勧誘表現「~マイカ」の衰退:狂言台本を資料として」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本には勧誘表現Vマイカがあるが、虎寛本ではVウデハアルマイカが該当し、Vマイカは見られない そへ発句をせまひか > 此に添発句をせうでは有るまいか …

京健治(2001.3)「ウズ」「ウズル」の衰退に関する一考察

京健治(2001.3)「「ウズ」「ウズル」の衰退に関する一考察」『文献探究』39 要点 近世期に急速に衰退するウズ・ウズルについて考える 大まかな流れ、 ウ優勢の流れにあって、ウズ・ウズルが衰退する その中で、ウズル優勢からウズ優勢へと逆転していく こ…

京健治(1993.6)「不十分終止」の史的展開:旧終止形残存の文法史的意義

京健治(1993.6)「「不十分終止」の史的展開:旧終止形残存の文法史的意義」『語文研究』75 要点 キリシタン資料や狂言に見られる旧終止形の例について考える 既に消えたとされるツ・ヌ・タリ・ナリ・タシ・形容詞終止形が当時の口語にも生きていたものと考…

山田潔(2020.5)『玉塵抄』における「らう・つらう・うずらう」の用法

山田潔(2020.5)「『玉塵抄』における「らう・つらう・うずらう」の用法」『国学院雑誌』121(5) 要点 標題形式について、以下の3点を考える ツラウが多くコソの結びとして用いられること ラウの上接語がアルに偏ること ウズラウがコソ・ゾと呼応せずにカと…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(4)助動詞「らう」「うずらう」の用法

山田潔(2001.9)「助動詞「らう」「うずらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出2001 要点 ツラウに引き続き、ラウ・ウズラウの意味用法について考える ラウについて、 ゾ・コソの結びが大半を占め、村上1979の言う通り、推量の強調をラウが担うと…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(3)複合助動詞「つらう」の用法

山田潔(2001.9)「複合助動詞「つらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1995 要点 室町のツラウについて考える 斯道本平家のケンは天草版ではツラウに交替する ケンの用法を以下の3種に分類すると、ケン→ツラウの例はA, Bしか見られない(木下書…

村上昭子(1979.2)助動詞ラウ:中世末期の用法

村上昭子(1979.2)「助動詞ラウ:中世末期の用法」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社 要点 中世末のラウに終止法が多く、しかも係助詞の結びが多いことについて、以下の2点から考えたい ラウと係助詞との関係 ラウとウとの意味上の関係 1点目、 ラ…

古田龍啓(2020.9)清原良賢講『論語抄』の諸本について

古田龍啓(2020.9)「清原良賢講『論語抄』の諸本について」『訓点語と訓点資料』145 要点 東山本の良賢抄は『応永27年本論語抄』としてよく使われるが、誤写の問題については看過されている 東山本、米沢本、大東急本、両足院本と、良賢抄の書き入れがある…

江原由美子(2019.3)逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって

江原由美子(2019.3)「逆接仮定を表す接続助詞トモとトをめぐって」『岡大国文論稿』47 要点 トモ・トの歴史について考える 現代語では生産的でないが、かつては主要形式であったこと モの有無と、トの使用が中世末期以降に増えること ドモ・ドからの類推説…

坂詰力治(2002.3)中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に

坂詰力治(2002.3)「中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に」『文学論藻』76 要点 終止形連体形の統合が終止法以外の終止形にも及ぶことについて、特に室町におけるマジ・ラン・ベシを見る 室町…

福田嘉一郎(2000.3)天草本平家物語の助動詞ラウ

福田嘉一郎(2000.3)「天草本平家物語の助動詞ラウ」『国文研究(熊本女子大学)』45 要点 原拠本との天草版との比較により、室町のラウの意味や機能について考える 天草版のラウは原拠本では、 ラウの場合:ラムの他、ムズラム、ツラム、ケムで、前接語は…

山口明穂(1969.3)中世文語における接続助詞「とも」

山口明穂(1969.3)「中世文語における接続助詞「とも」」『国語と国文学』46(3) 要点 トモの接続の様相を通して、文語行為について考えたい 詠歌大概註で宗祇は「ぬるとも」を「ぬるゝとも」に置き換えて説明する 当たり前のことのようであるが、宗祇自身の…

山口明穂(1972.3)中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程

山口明穂(1972.3)「中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程」『国文白百合』3 要点 ツツは秘伝書において以下のように記述され、あゆひ抄などでは認識されている「一つの動作の反復」についての説明がない 程経之心(動作の経過)/二事…

佐々木峻(1993.11)大蔵流狂言詞章の文末表現法:「……か知らぬ。」「……ぢゃ知らぬ。」等の言い方について

佐々木峻(1993.11)「大蔵流狂言詞章の文末表現法:「……か知らぬ。」「……ぢゃ知らぬ。」等の言い方について」山内洋一郎・永尾章曹(編)『継承と展開2近代語の成立と展開』和泉書院 要点 虎明本・虎寛本の「か知らぬ」系の形式について見る ひとまず、「ぞ…

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1) 要点 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える 二人の関係について、 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高…

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7) 要点 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差…

豊島正之(1982.2)初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について

豊島正之(1982.2)「初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について」『国語と国文学』59-2 要点 現代語トモニの2用法 同格の場合にトモニ:AとBはともにデパートに買い物に行った 同格でないときにトトモニ:AはBとともにデパートに買い物に行った…

坂梨隆三(2001.5)ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」

坂梨隆三(2001.5)「ロドリゲス『日本大文典』の「ないで」」宮下志朗・丹治愛(編)『シリーズ言語態3書物の言語態』東京大学出版会 要点 大文典の否定の記述に「上げないでござる」「申さないでござる」があるが、「なんで」とあるべきものではないか し…

小島和(2012.1)キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に

小島和(2012.1)「キリシタン資料における助詞ヨリの「主格」用法について:コンテムツスムンヂを中心に」『上智大学国文学論集』45 要点 ヨリについての説明のズレについて考える 大文典(やアルバレス)はヨリに主格と奪格を認めるが、 日葡は奪格、比較…

小島和(2011.1)『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に

小島和(2011.1)「『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に」『上智大学国文学論集』 要点 天草平家の地の文が対話による語りであることに注目する 喜一は右馬に対して「こなた」を使い、右馬は喜一に「そなた」を使う この差…