辻本桜介(2022.4)中古語における間接疑問文相当の引用句
辻本桜介(2022.4)「中古語における間接疑問文相当の引用句」『日本語の研究』18(1).
要点
- 古代語に間接疑問文は存在しないと考えられているが、間接疑問文に相当する用法を持つ引用句があることを主張する。
- まず、間接疑問文の用法を持つことが妥当であることを主張するために、プレイスホルダー用法(≒いついつ、どこどこ)*1を除外する必要がある。
- 以下の例のように、不定語に指示対象があると解しにくく、情報構造上の焦点が後続する述部にある場合、プレイスホルダー用法の可能性が高い。
- なにといらふべきかたもなければ、…(寝覚)
- その上で、確実に間接疑問文と同様の解釈といえるのは以下のようなタイプ。
- 中古に見出されるのは基本的には知覚動詞に限られ、「知らず」の打消の形になる。
メモ
- こういうの、室町以降だとトがない(語弊を招く言い方)「~もしらぬ」で出てくる
- ひさしひ事じやに依て、かくれみのはいかやうになつたもしらず、うちでのこづちと、かくれがさと二つもつたが、(40-虎明1642_01016,4420)
- いや身共らはどこもとに、ざいもくが有もしらぬ、(40-虎明1642_01019,5730)
- さはさりながら、何に成らうも知らぬ身の、(51-近松1711_18003,16440)
- これはどう見たらよい?
- 女は、何のあやめも知らぬことなれど、舎人どもさへ艶なる装束を尽くして、(20-源氏1010_00025,41360)
*1:尾上の「「某」項指示用法」、「特定を求める必要もない対象を不特定のままそれと指示する場合」。なお、卒論のリンクは2022/11現在は http://www.gges.xyz/ueyama/lecture/soturon/list.shtml