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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

高宮幸乃(2004.6)ヤラ(ウ)による間接疑問文の成立:不定詞疑問 を中心に

高宮幸乃(2004.6)「ヤラ(ウ)による間接疑問文の成立:不定詞疑問 を中心に」『三重大学日本語学文学』15

これと関連して

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要点

  • 次のような間接不定疑問文について、注釈的二文連置による成立を想定する
    • 何人がパーティーに出席するやらはっきりしない

カとヤラの異なり

  • 間接疑問文におけるカとヤラの現代語での差異について整理(2節)
    • 格助詞:何人が出席する{か/*やら}を覚えていない
    • 述語:何人が出席するやら{覚えていない(未決)/覚えている(既決)/尋ねた(対処)}(カは全て可)
    • かき混ぜ:私は何人がパーティーに出席する{か/やら}覚えていない/何人がパーティーに出席する{か/やら}私は覚えていない
    • 潜伏疑問名詞句:何人がパーティーに出席する{か/やら}人数を覚えていない
    • 注釈的で、歴史的にも注目される

構文のネットワークについて

  • 係り結びと注釈的二文連置と間接疑問文は連続する(3節)
    • 係り結び:何事かありけん(源氏夕霧)
    • 注釈的二文連置:何事にかありけむ、いと、多く、あはれげにの給ひしかな(源氏東屋)
    • 係り結び+間接疑問文:三処ノ中ニトコニカ羽カイツラウヲモ知ラヌホトニ(漢書抄)
    • 係り結びを構成しない間接疑問文:何人がパーティーに出席するのか知らない

ヤラの成立と展開

  • ヤラの間接疑問文に立ち戻って(4節)
    • ヤラは ニヤアラム>ヤラン なので、基本的に文末で機能する
    • 次のような注釈的二文連置→注釈句+潜伏疑問→間接疑問文というルートを想定する
      • ナントシタ心ヤラウ論語ニハ言語ヲ政事之上ニヲイタガ司馬遷ハ政事ヲ上ニヲイタソ(史記抄)
      • サルマヘハトレカ正本テアルヤラウ真実ヲ不知ソ(史記抄)
      • 何ト義理ヲ付ウスヤラ知ラヌホドニ(蒙求抄)
    • 「ヤラ知ラヌ」が先行し、他の述語に拡張する