永澤済(2007.10)漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化
永澤済(2007.10)「漢語動詞の自他体系の近代から現代への変化」『日本語の研究』3-4
要点
- 近代から現代にかけての、漢語動詞の自他について、自他両用から自動詞専用・他動詞専用
近代の漢語動詞の自他
- (現代ではそうではないが、)近代において自他両用として機能する漢語動詞
- 人間の時代に依りて変化するが如く真理も時代に依りて変化す。
- 人類が自然を支配し, 其周囲の事情を変化することは, 益々多きを加ふ。
- 自他両用の語が現代に比して多いが、しかし全てがそうというわけでもない
- 自動詞専用を見ると、
- 意志的行為:「移住する」「行動する」
- 心的活動:「安心する」「感激する」
- 生死など:「死亡する」
- 他動詞専用を見ると、
- 「移植する」「販売する」
- すなわち、
- 非情物または非情物と有情物の両方が変化主体となり得る(変化主体が有情物に限定されない)変化を表す場合に,その変化主体を目的語にとる他動詞として存立できる。(自動詞専用はこの条件に違反)
- 通常,他から人為的なはたらきかけを受けずとも成立し得る変化を表す場合に,その変化主体を主語にとる自動詞として存立できる。(他動詞専用はこの条件に違反)
- 自他両用動詞はこの両方を満たす
現代に至る変化
- 自動詞専用・他動詞専用であったものには変化はなく、自他両用から専用になるものはある
- 自他両用→自動詞専用
- 変化する・消滅する・発達する、など
- 自律性の高いもの・外的にコントロールしにくいものは他動詞で表せなくなった
- 「急激な事態展開, 位置・形状変化等, 外的にコントロー ルする状況を想定しやすい事象を表す場合に, その変化主体を目的語にとる他動詞として存立できる」という条件が加わる
- 自他両用→他動詞専用
- 隔離する・短縮する、など
- こちらは、漢語そのものの意味変化によって上の条件を満たさなくなった*1
- 自動詞専用への変化が優勢(自動詞21・他動詞3)なのは
- 自他の区別に「する・させる」の対立を導入したため
- 一方、自動詞化の接辞はないので、基本的には他動詞専用にはならない
*1:「定着によって意味が限定された」とするが、これは自動詞専用のもの(消滅とか)にも適用できそう?