ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

徳本文(2013.7)古典語複合動詞の後項「あふ」について

徳本文(2013.7)「古典語複合動詞の後項「あふ」について」『立教大学日本文学』110

要点

  • ~カハス、アヒ~との比較を通して~アフの意味と歴史的な変遷を考察

問題

  • 古典語~アフは現代語のように相互動作として解釈しにくい
  • 類義の後項動詞~カハスは現代語では生産的でない

Vアフ

  • 前提として、V+Vを以下のように分類する
  • Ⅰ実質的=前項・後項共に動詞としての実質的な意味を持つ。
    • A 前項と後項が意味上対等なもの(継起、並立、同時進行等)
      • これは前項と後項がそれぞれに別の概念を表すため、複合動詞とは認めにくい。
    • B 修飾関係=前項と後項が修飾関係にあり、どちらかに重点がある。
  • Ⅱ形式化=前項・後項のどちらか一方の動詞としての実質的意味が弱くなり、他方に対して補助的な役割を果たす。また、複数の動詞と結合し、造語機能を持つ。
    • A 接頭辞的用法
    • 補助動詞的用法
    • C 転義
  • 古典語における後項動詞アフは以下のように分類される
    • 本動詞の用法を保持するもの
    • 補助動詞的用法
      • 相互動作:互いを動作の対照とする
      • 同一動作:複数主体による同一の動作だが、互いを動作の対象としない
      • 際会(居合わせる
  • 上代のVアフは全て対面・邂逅の意があり、単独の動詞としての意味・格関係を保つ
  • 中古には補助動詞的用法のアフ
    • (従者らが)「…」~とそしりあへり(竹取)
    • 非生物主体のVアフの多くは補助動詞化せずに本動詞の意味を保持し、これは現代語に至るまで変わらない
    • ただし、竹取~源氏のアフは相互動作を表さない
  • 際会のVアフもこの頃に見られる
    • 妻戸の細目なるより、障子の開きあひたるを見入れたまふ。(源氏・常夏)
  • 相互動作の例は中世以降か
    • 力極テ取合トモ輒ク難打シ。(今昔)

Vカハス

  • 上代に既に本動詞の意味を失っている
    • やすのかは なかにへだててむかひたち そでふりかはし(万4125)
  • 中古においても相互動作を表している
  • が、今昔・軍記には見られない

アヒV

  • 以下の三種がある
    • 相互動作
    • 同一動作
    • その他(語調を整える)
  • どちらかと言うと、平安を通して衰退

まとめ

  • 上代から平安中期まで、Vアフに相互動作の意はなく、Vカハス・アヒVがその領域を担う
  • 院政期に相互動作のVアフが見られ、Vカハス・アヒVの衰退と時代的には重なる

雑記

  • ずっとメロディが頭に残っていて、でも思い出せずにいた曲が見つかった(なんと自分が昔作ったYoutubeのプレイリストに入っていた)

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