ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

複合動詞

小木曽智信(2010.10)明治大正期における補助動詞「去る」について

小木曽智信(2010.10)「明治大正期における補助動詞「去る」について」『近代語研究15』武蔵野書院. 要点 明治期には以下のようなアスペクト的な「V去る」があり、 まだ自己が天理の中に融合し去らない点があり、道を外に求むるためである。(太陽1909-01)…

池田來未(2021.3)複合動詞「~ヌク」の史的変遷

池田來未(2021.3)「複合動詞「~ヌク」の史的変遷」『国文』134. 要点 複合動詞Vヌクの完遂の用法(苦難を耐え抜く)の獲得について考える Vヌクの用法を姫野2018に倣って以下のように分類する p.76 調査結果、 上代は全てが〈貫通〉(踏み抜く) 中古に…

酒匂志野(2002.7)源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味

酒匂志野(2002.7)「源氏物語における複合動詞「~しそむ」の意味」『国文』97 要点 源氏を対象に、Vシソムのアスペクト的な意味について考える 以下の観点から分類する 「短時間の具体的な動作・変化」か「長期にわたる大規模で複合的な動作・変化・状態」…

小島聡子(1999.4)複合動詞後項「行く」の変遷

小島聡子(1999.4)「複合動詞後項「行く」の変遷」『国語と国文学』76(4) 要点 Vユクの意味変化について考える ユクは空間の移動もしくは時間の移動を表すが、本動詞はほぼ空間の移動を表す 調査、 中古は時代が下るに従って、空間移動の意味で用いられるこ…

鴻野知暁(2018.12)上代日本語の複合動詞の項構造について:二つの内項を取る場合を中心に

鴻野知暁(2018.12)「上代日本語の複合動詞の項構造について:二つの内項を取る場合を中心に」『言語・情報・テクスト』25 要点 ONCOJを使い、複合動詞の取る項について考える 上代の複合動詞の項構造は以下の4つに分類される 3は影山の「主要部からの受け…

青木博史(2013.12)複合動詞の歴史的変化

青木博史(2013.12)「複合動詞の歴史的変化」影山太郎(編)『複合動詞研究の最先端:謎の解明に向けて』ひつじ書房 要点 標題の問題について、 まず、古代語の複合動詞あるない問題を考える ある派:暮れ行く、とり~、敬語など、意味的・統語的に「複合し…

土居裕美子(2000.10)平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙

土居裕美子(2000.10)「平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙」『鎌倉時代語研究』 前提 平安和文と中世和漢混淆文の複合動詞語彙を考える さわぐ の前後項をそれぞれ以下の3つに分類 行動・動作:あけさわぐ/さわぎたつ 心情・…

宮腰賢(2007.11)自動詞「思ひ出づ」について

宮腰賢(2007.11)「自動詞「思ひ出づ」について」『国学院雑誌』108(11) 要点 中古の「思ひ出づ」には自動詞の用法もある 前提 他動詞としての「思ひ出づ」 君をあはれと思ひ出でける(竹取) 次の歌は「あの人を」「そのことを」などを補って解釈されるが…

徳本文(2017.3)複合動詞の後項「こむ」の変遷

徳本文(2017.3)「複合動詞の後項「こむ」の変遷」『立教大学日本語研究』24 要点 Vコムは中世から近世にかけて発達する 前提 現代語のVコム*1の用法を参考に、本動詞の意味を保つかどうかを基準として、以下の分類を立てる 内部移動:落ちこむ、食いこむ、…

青木博史(2004.9)複合動詞「~キル」の展開

青木博史(2004.9)「複合動詞「~キル」の展開」『国語国文』73-9 要点 複合動詞キルの用法が切断→遮断→終結→極度→完遂と展開したことを明らかにしつつ、 九州方言における可能の~キルとの関係性についても述べる 前提 以下のような複合動詞キルの用法は、…

徳本文(2013.7)古典語複合動詞の後項「あふ」について

徳本文(2013.7)「古典語複合動詞の後項「あふ」について」『立教大学日本文学』110 要点 ~カハス、アヒ~との比較を通して~アフの意味と歴史的な変遷を考察 問題 古典語~アフは現代語のように相互動作として解釈しにくい 類義の後項動詞~カハスは現代…

徳本文(2015.9)古代語複合動詞の後項「おく」について

徳本文(2015.9)「古代語複合動詞の後項「おく」について」『立教大学大学院日本文学論叢』15 要点 古代語のVオクには本動詞の意を残すものとそうでないものがあり、 補助動詞的Vオクには現代語のテオクとは異なり意図性の意がない 問題 古典語Vオクは現代…

永澤済(2017.3)複合動詞「Vおく」の用法とその衰退

永澤済(2017.3)「複合動詞「Vおく」の用法とその衰退」『名古屋大学日本語・日本文化論集』24 要点 「Vおく」について、近代に用法が限定化し、生産性が低下したことを示す 問題 近代以前の「Vおく」は生産性が高いが、 現代においては、書き置く、取り置…

小島聡子(2001.8)平安時代の複合動詞

小島聡子(2001.8)「平安時代の複合動詞」『日本語学』20-8 要点 古典語複合動詞について、その認定の方法と、V+V→VテVの移行の条件 平安時代の複合動詞 何をもって複合動詞とするか?の問題 意味的な密着性をもって「複合」と考え、補助動詞レベルのものも…

柳原恵津子(2012.3)自筆本『御堂関白記』に見られる複合動詞について

柳原恵津子(2012.3)「自筆本『御堂関白記』に見られる複合動詞について」『紀要(中央大学)』239 要点 記録語の複合動詞の性質について 「記録体には記録体特有の複合動詞が多くみとめられるという(峰岸明)氏の指摘は正しいものであり、古記録の用途に…

青木博史(2011.6)日本語における文法化と主観化

青木博史(2011.6)「日本語における文法化と主観化」澤田治美編『ひつじ意味論講座5 主観性と主体性』ひつじ書房 要点 いわゆる「主観化」に関する批判的検討 これが一方向的な変化かどうか 「文法化」と関連付けられるものかどうか 「~キル」 語彙的複合…

呉寧真(2017.2)動詞連用形に後接する「おはす・おはします」

呉寧真(2017.2)「動詞連用形に後接する「おはす・おはします」」『国語研究』80 この論文関連で hjl.hatenablog.com 要点 「~おはす・おはします」が、「~来」「~行」の敬語形としての複合動詞後項なのか、主体に敬意を添える補助動詞なのか、という問…

呉寧真(2018.8)中古和文複合動詞の主体敬語の形

呉寧真(2018.8)「中古和文複合動詞の主体敬語の形」『日本語の研究』14-3 要点 中古和文複合動詞の主体敬語は、動詞の敬意差によって異なる形で現れる 敬語独立動詞を用いる傾向がある動詞と,「たまふ」を用いる傾向がある動詞に分かれ,敬語独立動詞が2…

百留康晴(2017.3)中古における「~わづらふ」の文法化について

百留康晴(2017.3)「中古における「~わづらふ」の文法化について」『国語教育論叢(島根大学)』26 要点 タイトルまんま 中古の「~わづらふ」の分類 A 病気になる 乱り脚病といふ物ところせく起り患ひ侍りてはかばかしく踏み立つることも侍らず(源氏・若…

ココスの「焼きしめる」

はじめに 久々にココスに行ってビーフハンバーグステーキを食べようと思ったら、「お召し上がり方」から「焼きしめる」が消えていた 2018/06/22撮影 やきしめるってなに?肉に絞め技かければいいの? pic.twitter.com/TRAGVkRFz2— まりこ (@mazueriatu) 2013…