村上謙(2003.4)「近世後期上方における連用形命令法の出現について」『国語学』54-2
要点
- いわゆる連用形命令法の成立に、「一段動詞の命令形イ形」からの影響を想定する
前提
- 「早う行き」「さっさと帰り」のようないわゆる連用形命令法
- これは宝暦以後の遊里に端を発する
- 「お行き」は全国的に展開し、質的差異も大きいので、「お」のつかない形を中心に考えていく
- 後期上方語の命令表現のバリエーションとして、
- 連用形+ンカ:おとまさん。ふろへいりんか(風流裸人形)
- これは連用形命令法+ンカで、未+ンカとの区別において合理的であった
- 連用形禁止法:のみないな/くひな
- 連用形+ンカ:おとまさん。ふろへいりんか(風流裸人形)
- 変化が遊里で起こったのは社会的に必然的
- 遊里においては、一般的な言語表現の枠組みに新しい要素を編入し、細分化することによって言語表現の多様性を実現していた
- 前期にンスによる命令法が頻用されていたが、これが徐々に一般社会に受け入れられたことにより、新たな表現法式を生み出す必要性があった
連用形命令法の成立
- これまでの成立説の問題
- ナサレ省略説:連用形命令の「し」が「しなされ」に先行すること、「お」のない「行きなされ」のような形がほぼ見当たらないことに問題
- 一段化動詞(行きる)命令形説:「一段化動詞」というものが先に存在するのではなく、「行きんか」「行き」の出現によって一段化動詞が徐々に整備されたと考えるので、この説も採れない
- ここでは、「一(二)段動詞の命令形イ形からの影響」を考える
- 見よ→見い/止めよ→止めい
- 1750年頃を境にイ形へ転換
- ミー・トメーのように発音されたが、母音の長短意識の曖昧さにより、ミ・トメのように理解されることもあったか
- 外形的には連用形と同様なので、「一段動詞の命令形は外形的には連用形だ」という理解が生じた
- これが四段動詞にも波及し、連用形による命令法が創出されたものと考える
- さらに、一段動詞側にも「だんかうして見」のような連用形命令法が創出されることで、動詞全般に広がった
雑記
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