ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

神戸和昭(1999.10)黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に

神戸和昭(1999.10)「黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に」『近代語研究』10

要点

  • 「必ずしも明確になっていない」黄表紙の資料性について考える
    • 作者・版元が同一、刊年も近く、主要登場人物も借用する、以下2作品の比較から考える
    • 江戸生艶気樺焼(黄表紙・1785刊)、通言総籬(洒落本・1787刊)
  • 以下の7つの観点から比較検討する
    • ワア行五段・連用形はどちらもウ音便を取らず、促音便を取る
    • リ・イ語尾を取るラ五(クダサル)の連用形はどちらもイ語尾を取らず、リ語尾を取る
    • 二段活用もどちらも一段化している
    • 形容詞連用形は、どちらも敬語の場合にのみウ音便をとり(ごきげんよふ~のように固定的)、その他は原形を取る
    • コピュラは、総籬はダ専用、樺焼はヂャも見られるものの、通常の会話でなかったり、特殊な場面であったりする
    • 打消のナイ・ヌの傾向も同様で、
    • ダロウも終止法ではダロウ専用である点で共通する
  • 以上より、黄表紙会話文の口語性は洒落本と同様のものであると認められる

雑記

  • 日本における学術、しんどいな