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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中野伸彦(1990.12)江戸語における「命令文+終助詞『ね』」

中野伸彦(1990.12)「江戸語における「命令文+終助詞『ね』」」『山口大学教育学部研究論叢 第1部 人文科学・社会科学』40

要点

  • 江戸語と現代語の命令文+ネは意味合いが異なる
  • 「聞き手の自覚をもとにして、その自覚を確認する」という要求の仕方をする、命令文+ネ・ヨナ・ヨネは近代以降に発達したものである

前提

  • 現代語の命令文+ネは「要求されている行動をとろうという気が、既に聞き手にあるものと見て、それを確認するような調子で言う場合」に用いられるが、江戸語のそれは異なるように見える

命令文+ネ

  • 江戸語のものは現代語とは異なる環境で、しかも非常に稀
    • うそをお吐なさいねへ(春色恵の花)
    • それさマア聞イておくんなんしね(三躰誌[1802])
      • 聞き手が「聞く」という意志を持っているとは考えにくい例
  • 明治期も変わらず稀だが、大正期には例が増え、現代のものに近くなっているように見える
    • お暇があったら箱根へいらっしゃいましね(青年)
      • 直前に「いらっしゃいましな」の例もある
    • [心中を前に]その指環を私のと取替事して下さいね。(金色夜叉)のような、前代的な例もある

命令文+ヨナ・ヨネ

  • 命令文+ネに近いものにヨナ・ヨネが現代語にあるが、江戸語には見出し難く、大正期にようやく現れる
  • 上とまとめて、「聞き手の自覚をもとにして、その自覚を確認する」のを終助詞によって表すのは、明治以降の発達であると考えられる

雑記

  • どういうタイプのオタクなんだ

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