高橋敬一(1979.6)「今昔物語集における助動詞の相互承接」『福岡女子短大紀要』17
要点
- 助動詞の相互承接の豊かさ、使用頻度においても、今昔の文体上の区分は実証される
前提
- 相互承接の文体差に関して、築島(1963)は異なり語のみを挙げるが、使用頻度についても調査が必要ではないか
整理
- まず、今昔の内部において、
- 天竺震旦・本朝仏法部は相互承接の異なり語が少なく、本朝世俗部は相互承接の異なり語が多い
- 本朝世俗部にのみ見られるものとして、タラマシ、テケム、ツベシ、ナナリ、ザナリ、ザメリ、マジカラム、マジキナリ
- ほぼ集中するものに、テマシ、テムズ、ナマシ、ザリケム、ベカラム、…など
- 逆に、天竺震旦・本朝仏法部にのみ見られるのは、タラズ、ラム、リツ、ナラマシ、ザレリ、ベカラザリ、ベカルラム、ベカナリ、ベケムなど
- 3語の連接は世俗部に特に多い
- 天竺震旦・本朝仏法部は相互承接の異なり語が少なく、本朝世俗部は相互承接の異なり語が多い
- 築島(1963)と比較すると、
- 慈恩伝古点は今昔よりも少なく、
- 言語量の等しい源氏と比較すると、全体の異なり語は同程度だが、3,4語に限れば今昔の方が種類が豊富
- 使用頻度を見ると、
- 天竺震旦 1.61/p, 本朝仏法 2.55/p, 本朝世俗 5.00/p で、文体基調により明確に分かれる
- 説話文学は承接関係が単純であると感覚的に捉えられてきたが、和文に比しても決して少なくはない