ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

文体史

大坪併治(2008.9)石山寺本大智度論古点における「誰……者」の訓法について

大坪併治(2008.9)「石山寺本大智度論古点における「誰……者」の訓法について」『訓点語と訓点資料』121. 要点 石山寺本大智度論[858~]には、「誰…者」の構文が登場し、「たれか…するもの/ひと」と読む。 誰か当に治せむ者[もの]。 これが定着すること…

林禔映(2021.12)近世資料の文体差による叙法副詞の使用実態:「サスガ(ニ・ハ)」を例にして

林禔映(2021.12)「近世資料の文体差による叙法副詞の使用実態:「サスガ(ニ・ハ)」を例にして」『日本語教育(韓国日本語教育学会)』98. 要点 近世の副詞研究で手薄である文体的特徴に注目し、サスガニ・サスガハの文体差(ここでいう文体は、文末辞を…

橋本博幸(1990.6)漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合

橋本博幸(1990.6)「漢文訓読語の国語文への受容:「サダメテ」の場合」『訓点語と訓点資料』84. 要点 サダメテをケースに、「(漢文)直訳語がどのように国語文に受容されていったか」(例えば、意味や用法はそれをそのまま踏襲するのか?)を考える。 訓…

大坪併治(1969.6)提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に

大坪併治(1969.6)「提示語法について:訓点資料と今昔物語とを中心に」『佐伯博士古稀記念国語学論集』表現社. 要点 提示語法(「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与える形式」)は、訓点資料に幅広く認められ、 和漢混…

大坪併治(1981)提示語法

大坪併治(1981)「提示語法」『平安時代における訓点語の文法』風間書房. *1 要点 「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与へる形式」を「提示語法」と呼ぶと、平安時代の訓点語にはそれを幅広く認めることができる 第一義、…

大川孔明(2022.3)叙述類型から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2022.3)「叙述類型から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『国語学研究』61. 要点 述語形式を基準として、クラスター分析を用いて、平安鎌倉時代の文学作品に以下の文体類型を得た A:事象叙述型 B:準事象叙述型 C:属性叙述型 D:主観叙述…

大川孔明(2020.9)叙述語から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2020.9)「叙述語から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『計量国語学』32(6). 要点 叙述語(副詞・形状詞・形容詞)を指標とした多変量解析により、平安鎌倉時代の文学作品に、以下の文体類型を得た*1 A 物語日記-和文体型 B 物語日記-漢文…

大川孔明(2020.8)文連接法から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2020.8)「文連接法から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『日本語の研究』16(2). 要点 文連接法(接続詞、指示詞、接続助詞、無形式)を指標としたクラスター分析により、平安鎌倉時代の文学作品に以下の文体類型の位置付けができることを…

小木曽智信(2010.10)明治大正期における補助動詞「去る」について

小木曽智信(2010.10)「明治大正期における補助動詞「去る」について」『近代語研究15』武蔵野書院. 要点 明治期には以下のようなアスペクト的な「V去る」があり、 まだ自己が天理の中に融合し去らない点があり、道を外に求むるためである。(太陽1909-01)…

室井努(2006.1)今昔物語集の人数表現について:数量詞転移の文体差と用法および数量詞遊離構文に関して

室井努(2006.1)「今昔物語集の人数表現について:数量詞転移の文体差と用法および数量詞遊離構文に関して」『日本語の研究』2(1). 要点 今昔の数量詞転移・数量詞遊離について、以下の2点を明らかにする A 数詞単独:三人共ニ一家ニ住シテ世ヲ過ス。(10-2…

出雲朝子(1993.7)『玉塵抄』の会話文:文末の形について

出雲朝子(1993.7)「『玉塵抄』の会話文:文末の形について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂. 標記の問題について、会話文を以下のように分類 A 原漢文に該当する会話部があるもの 1 終結部が明示されている(「~」ト云) 2 明示されていな…

豊島正之(1982.2)初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について

豊島正之(1982.2)「初期キリシタン文献の文語文に見える「ともに」について」『国語と国文学』59-2 要点 現代語トモニの2用法 同格の場合にトモニ:AとBはともにデパートに買い物に行った 同格でないときにトトモニ:AはBとともにデパートに買い物に行った…

森野宗明(1960.3)ベラナリということば:位相上の問題を主として

森野宗明(1960.3)「ベラナリということば:位相上の問題を主として」『国語学』40 要点 ベラナリには、散文韻文両用説、韻文の男性語説などがあるが、以下の説を主張したい 1 平安初期としては訓点語としても用いられたが、口頭語とは(男性語の中であって…

村上昭子(1993.7)『大蔵虎明本狂言集』における終助詞「ばや」について

村上昭子(1993.7)「『大蔵虎明本狂言集』における終助詞「ばや」について」『小松英雄博士退官記念日本語学論集』三省堂 要点 舞台言語の文体の問題として、虎明本のバヤに焦点を当てて考える 「名乗り」とその後の独白による「行動予定の提示」を類型化す…

土居裕美子(2000.10)平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙

土居裕美子(2000.10)「平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙」『鎌倉時代語研究』 前提 平安和文と中世和漢混淆文の複合動詞語彙を考える さわぐ の前後項をそれぞれ以下の3つに分類 行動・動作:あけさわぐ/さわぎたつ 心情・…

佐佐木隆(2014.1)散文と韻文のミ語法

佐佐木隆(2014.1)「散文と韻文のミ語法」『国語国文』83(1) ※同(2016)『上代日本語構文史論考』おうふう による 前提 ミ語法に関する根本的な問題 はづかしみいとほしみなもおもほす(続紀27) 日国はイトオシムに引用、すなわち動詞連用形と見て、 古語…

高橋敬一(1979.6)今昔物語集における助動詞の相互承接

高橋敬一(1979.6)「今昔物語集における助動詞の相互承接」『福岡女子短大紀要』17 要点 助動詞の相互承接の豊かさ、使用頻度においても、今昔の文体上の区分は実証される 前提 相互承接の文体差に関して、築島(1963)は異なり語のみを挙げるが、使用頻度…

梅原恭則(1969.11)古今著聞集に於ける助動詞の相互承接

梅原恭則(1969.11)「古今著聞集に於ける助動詞の相互承接」『文学論藻』43 前提 実際の作品の分析・調査がなされたことがないので、古今著聞集をケースとして相互承接を検証したい 実態 以下表のようにまとめられる ナリ・タリ・ゴトクナリは「叙述の働き…

岸本恵実(2018.5)キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば

岸本恵実(2018.5)「キリシタン版対訳辞書にみる話しことばと書きことば」高田博行・小野寺典子・青木博史(編)『歴史語用論の方法』ひつじ書房 前提 大文典における「話しことば」と「書きことば」の区別について考えたい ロドリゲスは日本語の大きな特徴…

楊瓊(2015.3)上代の接続詞「しからば」の発生について

楊瓊(2015.3)「上代の接続詞「しからば」の発生について」『同志社国文学』82 問題 日本語接続詞は中古においては未発達だが、シカラバの例が上代に既にある 万葉集唯一のシカラバの仮名書き例 人妻とあぜかそを言はむ然らばか(志可良婆加)隣の衣を借り…

乾善彦(2011.3)『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文

乾善彦(2011.3)「『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文」坂詰力治編『言語変化の分析と理論』おうふう 要点 三宝絵の諸本の関係性と、それを通して見る和漢混淆文のあり方について 前提 源為憲撰『三宝絵』(永観2[984]成)三伝本 平仮名本 関戸本(保安元[1…

劉洪岩(2015.3)中古日本語の統語構造に対する漢文訓読の影響:主要部構造変容を中心に

劉洪岩(2015.3)「中古日本語の統語構造に対する漢文訓読の影響:主要部構造変容を中心に」『東アジア日本語教育・日本文化研究』18 要点 漢文訓読が日本語に及ぼした統語構造の変化について 問題 漢文訓読によって、基本的な構造(基本語順)は影響を受け…

斎藤文俊(2018.11)明治初期における聖書の翻訳と日本語意識:漢文訓読語法「欲ス」を例に

斎藤文俊(2018.11)「明治初期における聖書の翻訳と日本語意識:漢文訓読語法「欲ス」を例に」沖森卓也編『歴史言語学の射程』三省堂 要点 聖書翻訳において、漢訳聖書の「欲す」が他本でどのように現れるかを見ることで、その文体選択のあり方を見る 聖書…

金水敏(2011.9)言語資源論から平安時代語を捉える:平安時代「原文一途」論再考

金水敏(2011.9)「言語資源論から平安時代語を捉える:平安時代「原文一途」論再考」『訓点語と訓点資料』127 要点 「平安時代は言文一途の時代であった」とする考え方の批判的検討 前提 言語に性質の異なる複数の階層が存在し、 第一言語:基本語彙と基本…

田中牧郎・山元啓史(2014.1)『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』の同文説話における語の対応:語の文体的価値の記述

田中牧郎・山元啓史(2014.1)「『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』の同文説話における語の対応:語の文体的価値の記述」『日本語の研究』10-1 要点 今昔と宇治拾遺の同文説話のパラレルコーパスを作ることで、「硬い」語彙と「軟らかい」語彙が抽出・特定で…

柳原恵津子(2012.3)自筆本『御堂関白記』に見られる複合動詞について

柳原恵津子(2012.3)「自筆本『御堂関白記』に見られる複合動詞について」『紀要(中央大学)』239 要点 記録語の複合動詞の性質について 「記録体には記録体特有の複合動詞が多くみとめられるという(峰岸明)氏の指摘は正しいものであり、古記録の用途に…

山本真吾(2017.9)訓点特有語と漢字仮名交じり文:延慶本平家物語の仮名書き訓点特有語をめぐる

山本真吾(2017.9)「訓点特有語と漢字仮名交じり文:延慶本平家物語の仮名書き訓点特有語をめぐる」『訓点語と訓点資料』139 要点 『つきての研究』以降における「漢文訓読語」の批判的総括 漢文訓読語、訓点語、訓点特有語 築島裕『平安時代の漢文訓読語に…

大川孔明(2017.9)和漢の対立から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2017.9)「和漢の対立から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『訓点語と訓点資料』139 要点 計量的観点による平安時代の和文体・漢文訓読体の文体対立・類型の分析 文体類型 CHJを用いて、語彙の対立を文体対立として見ることで分析 漢語の使…

土井光祐(2018.2)明恵関係聞書類の一般性と特殊性:言語変種とその制約条件をめぐって

土井光祐(2018.2)「明恵関係聞書類の一般性と特殊性:言語変種とその制約条件をめぐって」『駒澤国文』55 問題意識 明恵資料群全体を等質の言語データとして扱うことは非常に困難 鎌倉時代口語研究に必要な6つの視点(土井2007) 資料的性格:資料の本来的…

山本真吾(2018.4)鎌倉時代の言語規範に関する一考察:「古」なるものへの意識をめぐる

山本真吾(2018.4)「鎌倉時代の言語規範に関する一考察:「古」なるものへの意識をめぐる」藤田保幸編『言語文化の中世』和泉書院*1 要点 前後の時代と画される(引き裂かれる)「中世」が、国語意識史の中でどのように捉えられるかを、「古人」のあり方か…