ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中世前期

鈴木泰(2017.11)古典日本語における認識的条件文

鈴木泰(2017.11)「古典日本語における認識的条件文」有田節子(編)『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版 要点 認識的条件文の前件の以下の3分類に基づき、今昔の条件文を概観する A 発話時の時点で成立・非成立が決定している(昨…

小田勝(2006)不十分終止の句(5,6)句の並立、句の素材化

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 挿入句・提示句・成分の句化以外の不十分終止の句について概観し、不十分終止句の全体像を捉える(5節) 並列の関係に立つ不十分終止の句がある 返しせねば情けなし、えせざらむ人は、は…

小田勝(2006)不十分終止の句(4)挿入句と成分の句化

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 以下の特殊性について考えるために、挿入句の構文的職能について考える 白き衣の萎えたると見ゆる着て、掻練の張綿なるべし、腰よりしもに引きかけて、側みてあれば、顔は見えず(落窪)…

小田勝(2006)不十分終止の句(3)提示句の諸相

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 「提示句」とその連続について、a の変形に b, cがあることを指摘する(第3節) a 此ノ牛、片山ニ―ノ石ノ穴有リ、其ノ穴ニ入ル。(典型的な提示句) b 此ノ牛、片山ニ―ノ石ノ穴有リ、入…

小田勝(2006)不十分終止の句(1,2)提示句

小田勝(2006)「不十分終止の句」『古代語構文の研究』おうふう 要点 形態上独立した句をすべて「挿入句(はさみこみ)」で説明するのは難しい(問題の所在) 挿入句とは異なるタイプのものとして、「提示句」が存在することを示す(第2節 提示句) 挿入句…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(2)複合助動詞「つらむ」の用法に関する一考察

山田潔(2001.9)「複合助動詞「つらむ」の用法に関する一考察」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1993 要点 平家のツラムについて、キ・ツの問題を踏まえながら考える キ・ツは意味的に近似し、キは現在との交渉を持たない過去を、ツは何らかの意味で交渉を…

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(1)平家物語における助動詞「つ」の文章論的考察:助動詞「き」との比較を通して

山田潔(2001.9)「平家物語における助動詞「つ」の文章論的考察:助動詞「き」との比較を通して」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1986 これのつづき hjl.hatenablog.com 要点 ツの完了・強意以外の意味用法の分析を、(ヌではなく)キと比較する形で行う …

月本雅幸(1992.11)院政期の訓点資料における助動詞

月本雅幸(1992.11)「院政期の訓点資料における助動詞」『国語と国文学』69(11) 要点 平安初期訓点資料に比して院政期訓点資料が活用されることは少ないが、価値が低いとは言い切れない 当時の口語を含む部分がありそうな一方で、移点などによる年代的重層…

坂詰力治(2002.3)中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に

坂詰力治(2002.3)「中世における助動詞の接続用法に関する一考察:終止形接続の助動詞「まじ」「らん」「べし」を中心に」『文学論藻』76 要点 終止形連体形の統合が終止法以外の終止形にも及ぶことについて、特に室町におけるマジ・ラン・ベシを見る 室町…

鈴木裕史(1999.3)接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合

鈴木裕史(1999.3)「接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合」『文教大学国文』28 要点 中世におけるツツについて考える 新旧語法の交錯する、とはずがたりを対象とする hjl.hatenablog.com まず、ツツの本義については反復・継続…

山口明穂(1969.3)中世文語における接続助詞「とも」

山口明穂(1969.3)「中世文語における接続助詞「とも」」『国語と国文学』46(3) 要点 トモの接続の様相を通して、文語行為について考えたい 詠歌大概註で宗祇は「ぬるとも」を「ぬるゝとも」に置き換えて説明する 当たり前のことのようであるが、宗祇自身の…

山口明穂(1972.3)中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程

山口明穂(1972.3)「中世文語における「つつ」についての問題:意味認識の過程」『国文白百合』3 要点 ツツは秘伝書において以下のように記述され、あゆひ抄などでは認識されている「一つの動作の反復」についての説明がない 程経之心(動作の経過)/二事…

佐藤宣男(1974.10)平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして

佐藤宣男(1974.10)「平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして」『藤女子大学国文学雑誌』16 要点 終助詞ナムは中世以降に古語化したとされるが、実態について触れられたことはない まず平安期において見ると、 和歌の例が多いが…

山本真吾(1994.5)延慶本平家物語に於ける古代語の用法について:「侍り」「めり」「まほし」を軸として

山本真吾(1994.5)「延慶本平家物語に於ける古代語の用法について:「侍り」「めり」「まほし」を軸として」水原一編『延慶本平家物語考証3』新典社 要点 延慶本における「新しい語法」が注目されがちだが、「古い語法がどうなっているか」の検討も併せて行…

山本真吾(2010.12)平家物語諸本と中世語:延慶本の言語年代をめぐって

山本真吾(2010.12)「平家物語諸本と中世語:延慶本の言語年代をめぐって」『国文論叢(神戸大学)』43 要点 延慶本平家は鎌倉時代語資料とはされるが、転写は応永まで下るので、当時の言語現象を含む可能性がある このことを踏まえて、延慶本の資料性を、…

山口堯二(2000.3)『天草版平家物語』の「まじい」と「まい」:原文との対照から見た打消推量の助動詞統合の歩み

山口堯二(2000.3)「『天草版平家物語』の「まじい」と「まい」:原文との対照から見た打消推量の助動詞統合の歩み」『京都語文』5 要点 原拠本平家と天草平家の対照と通して、打消推量の助動詞の流れを考える 対照を行うと、次の通り 原拠のマジの訳語とし…

大塚光信(1962.9)助動詞マイの成立について

大塚光信(1962.9)「助動詞マイの成立について」『国語学』50 要点 口語法別記ではマイの成立に以下の過程を想定する 甲:終止形マジがマイとなり、そのマイが連体形マジキの領域を侵した 乙:終止形マジが連体形マジキの領域を侵し、終止・連体形両用とな…

渡辺由貴(2011.3)中世における文末表現「と思ふ」と「と存ず」

渡辺由貴(2011.3)「中世における文末表現「と思ふ」と「と存ず」」『早稲田日本語研究』20 前提 中世における文末表現の「と思う」「と存ず」の位置付けを、以下2点から考えたい 話し手と聞き手の関係性 モダリティとしての表現性 分析1 身分の関係を見る…

後藤睦(2019.6)『宇治拾遺物語』のノ・ガ尊卑の実態について:「ノ・ガ尊卑説」再考のための端緒として

後藤睦(2019.6)「『宇治拾遺物語』のノ・ガ尊卑の実態について:「ノ・ガ尊卑説」再考のための端緒として」『語文』112 要点 中世前期のガノに尊卑による使い分けはないが、 一部そう見えるために、過剰般化された規範も存した 前提 規範としてのガノ尊卑…

坂詰力治(1995.11)中世語法より見た『発心集』:国語資料としての性格

坂詰力治(1995.11)「中世語法より見た『発心集』:国語資料としての性格」『国語と国文学』72-11 前提 発心集(鎌倉成立)の性格について考える 慶安4[1651]刊の版本による 発心集の文法現象 二段活用の一段化と見られるものに「朝ニサカヘル家」の例が…

土居裕美子(2000.10)平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙

土居裕美子(2000.10)「平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙」『鎌倉時代語研究』 前提 平安和文と中世和漢混淆文の複合動詞語彙を考える さわぐ の前後項をそれぞれ以下の3つに分類 行動・動作:あけさわぐ/さわぎたつ 心情・…

高橋敬一(1979.6)今昔物語集における助動詞の相互承接

高橋敬一(1979.6)「今昔物語集における助動詞の相互承接」『福岡女子短大紀要』17 要点 助動詞の相互承接の豊かさ、使用頻度においても、今昔の文体上の区分は実証される 前提 相互承接の文体差に関して、築島(1963)は異なり語のみを挙げるが、使用頻度…

梅原恭則(1969.11)古今著聞集に於ける助動詞の相互承接

梅原恭則(1969.11)「古今著聞集に於ける助動詞の相互承接」『文学論藻』43 前提 実際の作品の分析・調査がなされたことがないので、古今著聞集をケースとして相互承接を検証したい 実態 以下表のようにまとめられる ナリ・タリ・ゴトクナリは「叙述の働き…

菅原範夫(1991.10)延慶本平家物語の「ムズ」小考

菅原範夫(1991.10)「延慶本平家物語の「ムズ」小考」『鎌倉時代語研究』14 要点 鎌倉時代のムズはベシに意味的に近似し、前代のムズからの変容が見られる ムズの意味 ムズ単独の場合、ベシに近い意味を持つ 打上ムトスルモカナウマジ。下ヘ落シテモ死ムズ…

泉基博(1995.11)『十訓抄』における「つ」と「ぬ」:史的変遷を中心にして

泉基博(1995.11)「『十訓抄』における「つ」と「ぬ」:史的変遷を中心にして」『宮地裕・敦子先生古稀記念論集 日本語の研究』明治書院 要点 「つ」「ぬ」の転換期である中世前期の様相を『十訓抄』を元に考える 使用量と活用 源氏から十訓抄にかけて、ヌ…

松本昂大(2016.10)古代語の移動動詞と「起点」「経路」:今昔物語集の「より」「を」

松本昂大(2016.10)「古代語の移動動詞と「起点」「経路」:今昔物語集の「より」「を」」『日本語の研究』12(4) 要点 移動動詞の意味的特徴によって、起点を表す格助詞の用法が決定される 前提 ヨリ・ヲは概ね、起点・経路を表すとされている が、万葉集に…

信太知子(2007.3)古代語終止形の機能:終止連体同形化と関連させて

信太知子(2007.3)「古代語終止形の機能:終止連体同形化と関連させて」『 神女大国文』18 要点 終止形連体形の合流について、連用終止同形の活用語が、その異形態化を目指したものであると考える 問題 終止形連用形が同形の語において、それがどちらである…

吉田永弘(2012.3)平家物語と日本語史

吉田永弘(2012.3)「平家物語と日本語史」『愛知県立大学説林』60 要点 原拠本と天草版との対照による研究方法のあり方について 前提 一般的な諸本系統図のモデル(図1)は、書写過程以外における「作られた本文」を持つ異本の発生のある平家においては適用…

秋田陽哉(2015.5)源平盛衰記に見られる命令を表す「べし」

秋田陽哉(2015.5)「源平盛衰記に見られる命令を表す「べし」」松尾葦江『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院 要点 ベシの命令の意について、以下の点を示す 中古にはほぼ見られないが、中世に多く見られるようになること 盛衰記には多く見られ、覚一本…

山田昌裕(2000.6)主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較

山田昌裕(2000.6)「主語表示「ガ」の勢力拡大の様相:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』との比較」『国語学』51-1 要点 原拠本平家と天草版平家に対照によるガの勢力拡大について、主に以下の3点を示す 対象を明示化する指向があること 疑問文におい…