ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

後藤睦(2017.12)上代から中世末期におけるガ・ノの上接語の通時的変化

後藤睦(2017.12)「上代から中世末期におけるガ・ノの上接語の通時的変化」『待兼山論叢. 文学篇』51

前提

  • 古代語ではガ・ノは主格標示・連体修飾の両方に使われるが、
    • ガは固有名詞・代名詞・代名詞の代用形式(妹が名)に、ノはそれ以外にという分布があり、名詞句階層モデルに一致することも指摘される
    • ここでは尊卑説については考えない
  • 上接語の制限の崩壊はいつ頃か?

調査

  • 主格標示と連体修飾に分けて、上接語の分類はSilversteinに従う

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p.47

  • 調査結果に基づけば(p.52)
    • 万葉集~宇治拾遺:ガとノは主語標示用法・連体修飾用法ともに名詞句階層モデルに基づいて分布している。
    • ② 覚一本平家:主語標示用法のガ、主語標示用法・連体修飾用法のノの上接語が拡大する。この段階では名詞句階層モデルに沿った分布を保持している。
    • ③ 天草版平家:主語標示用法のガがすべての上接語で、連体修飾用法のノが代名詞以外の上接語でそれぞれ主流になり、ガは主語標示用法、ノは連体修飾用法にそれぞれ専用化する。
  • 上接語の拡大の観点から見れば、
    • 連体修飾における無生物名詞+ガは宇治拾遺以降確認されず、
    • 主格標示の無生物名詞+ガは、14C以降(覚一本平家)に現れる
    • ノは14C以降、代名詞領域に下接するようになる

雑記

  • 体調崩した…つらい…