ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

通史

大坪併治(1981)提示語法

大坪併治(1981)「提示語法」『平安時代における訓点語の文法』風間書房. *1 要点 「文中のある語を無格のままで提示し、これを代名詞で受けて特定の格を与へる形式」を「提示語法」と呼ぶと、平安時代の訓点語にはそれを幅広く認めることができる 第一義、…

鈴木薫(2020.2)中古中世における「むとす」と「むず」

鈴木薫(2020.2)「中古中世における「むとす」と「むず」」『国語研究(国学院大学)』83. 要点 以下の分類を用意し、ムトスとムズの用法差を記述する 以下、①⑤は現代語のヨウトスルにはなく、ムトス・ムズには存する 意志的 ①自身の意向(文末):(自身が…

山田昌裕(2022.3)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて

山田昌裕(2022.3)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて」『論究日本近代語第2集』勉誠出版. 要点 17C以降、格助詞ガの上接語が名詞句以外に拡張することを主張する 17C以降に、テ節・引用句を、 ひえてしとをしてがよからふ(醒睡…

金銀珠(2022.1)主格助詞「が」の拡大と準体法の衰退

金銀珠(2022.1)「主格助詞「が」の拡大と準体法の衰退」『中部日本・日本語学論集』和泉書院. 要点 連体形+ガが、主格のNガの確立の際に与えた影響について、以下4点を主張する NガにおけるNは、古代語では指示対象が明確であるが(金2016, 2019)、中世…

金銀珠(2020.11)主格助詞「が」が係る述語の拡大:上代から中世までを対象に

金銀珠(2020.11)「主格助詞「が」が係る述語の拡大:上代から中世までを対象に」『名古屋大学国語国文学』113. 要点 ガの係る述語は、中古では活動的な動詞が9割程度を占める(金2016)が、その後、状態性の高い方へと拡張する 述語の品詞は、活動動詞→非…

Kanako KOMIYA, Aya TANABE, Hiroyuki SHINNOU. 2022.7. Diachronic Domain Adaptation of Word Sense Disambiguation in Corpus of Historical Japanese Using Word Embeddings(分散表現を利用した日本語歴史コーパスにおける語義曖昧性解消の通時適応)

Kanako KOMIYA, Aya TANABE, Hiroyuki SHINNOU. 2022.7. Diachronic Domain Adaptation of Word Sense Disambiguation in Corpus of Historical Japanese Using Word Embeddings. NINJAL Research Papers. 23. 古宮嘉那子・田邊絢・新納浩幸(2022.7)「分散…

沖森卓也『日本語全史』を活用するために

沖森卓也(2017)『日本語全史』ちくま新書は、「学部生にリファレンスとしてとりあえず持っておいてほしい本」として抜群のコストパフォーマンスを誇る。 www.chikumashobo.co.jp が、広い分野・時代に亘って記述することの弊害か、特に、著者の直接的な専…

菊池そのみ(2021.8)古典語における形容詞テ形節の副詞的用法の変遷

菊池そのみ(2021.8)「古典語における形容詞テ形節の副詞的用法の変遷」『国語語彙史の研究40』和泉書院. 要点 標記の問題について、以下2点を考える 通時的概観と、下接する動詞の特徴についての検討 形容詞テ形節の修飾のタイプに基づく各時期の様相の記…

仁科明(2006.3)「恒常」と「一般」:日本語条件表現における

仁科明(2006.3)「「恒常」と「一般」:日本語条件表現における」『国際関係・比較文化研究』4(2) 要点 厳密に議論されてこなかった「恒常条件」「一般条件」の定義について考える 先行研究における定義はそれほどはっきりしないが、「結び付けられる二つの…

池田來未(2021.3)複合動詞「~ヌク」の史的変遷

池田來未(2021.3)「複合動詞「~ヌク」の史的変遷」『国文』134. 要点 複合動詞Vヌクの完遂の用法(苦難を耐え抜く)の獲得について考える Vヌクの用法を姫野2018に倣って以下のように分類する p.76 調査結果、 上代は全てが〈貫通〉(踏み抜く) 中古に…

中川祐治(2006.4)副詞はどう変化するのか:日本語史から探る副詞の諸相

中川祐治(2006.4)「副詞はどう変化するのか:日本語史から探る副詞の諸相」『日本語学』25(5) 要点 文法化の枠組みで、副詞の変化の実態とメカニズムについて考える 1 イタク・イト イタもしくは形容詞イタシから派生した語で、 イタク・イト(甲)は原義…

福田嘉一郎(1998.2)説明の文法的形式の歴史について:連体ナリとノダ

福田嘉一郎(1998.2)「説明の文法的形式の歴史について:連体ナリとノダ」『国語国文』67(2) 要点 連体ナリとノダの関係について、平家と天草平家の対照に基づいて考える 信太1970は、連体形準体法+ナリ→連体形+ノor形式名詞+コピュラへの交替を想定する…

竹内史郎(2005.1)サニ構文の成立・展開と助詞サニについて

竹内史郎(2005.1)「サニ構文の成立・展開と助詞サニについて」『日本語の研究』1(1) 要点 サニ構文の先行論3点、 a 中古のサニは形容詞語幹+サ+ニ b 室町期は単一の形態素サニ c a,bより、[[…ノ~サ]ニ]→[[…ガ~]サニ]の変化と記述できる このう…

青木博史(2003.3)「~サニ」構文の史的展開

青木博史(2003.3)「「~サニ」構文の史的展開」『日本語文法』3(1) 要点 原因・理由を表す「形容詞語幹+サ+ニ」について、句の包摂の観点から考える 消長について、 現代語で「特定の語彙に固定されてはいない」(影山1993)とされるが、 実質的にはほぼ…

木下書子(1993.12)「けん」から「つらう」へ:「る」「らる」を承ける場合を中心に

木下書子(1993.12)「「けん」から「つらう」へ:「る」「らる」を承ける場合を中心に」『国語国文学研究』29 要点 ケンからツラウへの交替について、特に上接語の制限を中心に考えたい 当初のツランはケンの領域を侵さないのだが、 これはツの上接語の制限…

小木曽智信(2020.3)通時コーパスに見るモダリティ形式の変遷

小木曽智信(2020.3)「通時コーパスに見るモダリティ形式の変遷」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 CHJを用いて、モダリティ形式の大きな変化を見る 古代語はム・ムズ・ジ、ケム・ベシ・マジ・ラシ・メ…

森脇茂秀(2000, 2001)希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって

森脇茂秀(2000.12)「希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって(一)」『別府大学国語国文学』42 森脇茂秀(2001.3)「希望の助辞「もがな」「がな」をめぐって(二)」『山口国文』24 要点 シカ系・カシは「詠嘆的希望表現」から「主体的希望表現」へと変…

信太知子(1998.3)「である」から「ぢゃ」へ:断定の助動詞の分離型と融合型

信太知子(1998.3)「「である」から「ぢゃ」へ:断定の助動詞の分離型と融合型」『神女大国文』9 要点 ヂャの成立にはニアリ>ニテアリ>デアル>デア>ヂャが想定されているが、文献にはデアル系(分離型)はそれほど多く見られない ヂャは15C後半、デアルは12…

森勇太(2018.5)近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に

森勇太(2018.5)「近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に」小林隆(編)『コミュニケーションの方言学』ひつじ書房 要点 申し出表現の地理的なバリエーションを考える (その荷物は私が)持たしてもらいます(GAJ320・京都…

森勇太(2011.4)申し出表現の歴史的変遷:謙譲語と与益表現の相互関係の観点から

森勇太(2011.4)「申し出表現の歴史的変遷:謙譲語と与益表現の相互関係の観点から」『日本語の研究』7(2) 要点 申し出表現の考察を通して、テアゲル・テサシアゲルなどの「与益表現」の運用の変遷について考える 前提、申し出における与益表現は、 現代語…

宮内佐夜香(2016.12)逆接確定条件表現形式の推移についての一考察:中世後期から近世にかけて

宮内佐夜香(2016.12)「逆接確定条件表現形式の推移についての一考察:中世後期から近世にかけて」青木博史・小柳智ー・高山善行(編)『日本語文法史研究3』ひつじ書房 要点 ドモ・ドからガ、ケレドモ・ケレドへの移行について考える ドモ→ケレドモの過程…

青木博史(1997.7)カス型動詞の消長

青木博史(1997.7)「カス型動詞の消長」『国語国文』67(7) 要点 以下の問題点を踏まえて、近世以降のカス型動詞について考える 現代語には見られないものがあること(くゆらかす、ふくらかす、つからかす) 意味用法を大きく変えた例があること(胸を冷やか…

青木博史(1997.3)カス型動詞の派生

青木博史(1997.3)「カス型動詞の派生」『国語学』188 要点 カス型動詞(散らかす、冷やかす)について明らかになっていること カスが肥大化した接尾語であること スの動詞(タブル・タブラス・タブラカス)を持つ代入型が直接型に先行すること 「よくない…

土岐留美江(2012.6)意志表現とモダリティ

土岐留美江(2012.6)「意志表現とモダリティ」沢田治美編『ひつじ意味論講座第4巻 モダリティII:事例研究』ひつじ書房 要点 モダリティの事例研究として意思表現について考えたい モダリティ体系の中での意志の位置付けは、そもそもモダリティに組み込むか…

野村剛史(1996.5)ガ・終止形へ

野村剛史(1996.5)「ガ・終止形へ」『国語国文』65(5) 要点 「ガー終止形」の発達について考える 上代から中古に見られるノ・ガの下接語・構文の変化は以下の通り 係り結びが、連体形句と呼応する「〈ーカ・ヤ・ソ〉〈ーノ・ガー連体形〉」の語順を守らなく…

野村剛史(1993.12)古代から中世の「の」と「が」

野村剛史(1993.12)「古代から中世の「の」と「が」」『日本語学』12(10) 要点 上代のノ・ガの文法的性格まとめ(野村1993)、 ノは以下の5つの用法、ガは①④のみを持ち(野村1993)、 ①主格 ②比喩 ③同格 ④所有格 ⑤その他 主格ノ・ガは従属句の中に、「~は…

清田朗裕(2020.3)ソモソモ考

清田朗裕(2020.3)「ソモソモ考」『国語と教育(大教大)』45 要点 ソモソモの名詞用法(そもそもが~)の獲得の過程と要因について考える いわゆる文法化の方向性とは逆の方向性を持つ(接続詞→名詞) 大文典や日葡には接続詞的なカテゴリとして記述されて…

宮地朝子(2010)ダケの歴史的変化再考:名詞の形式化・文法化として

宮地朝子(2010)「ダケの歴史的変化再考:名詞の形式化・文法化として」田島毓堂編『日本語学最前線』和泉書院 要点 ダケの限定用法が他用法に遅れることは知られているが、その成立はよく分かっていないし、他用法との連続性も認められる 以下の歴史的変化…

大鹿薫久(2004.6)モダリティを文法史的に見る

大鹿薫久(2004.6)「モダリティを文法史的に見る」尾上圭介(編)『朝倉日本語講座6文法Ⅱ』朝倉書店 要点 モダリティを「判断のありように対応する意味上の概念」と規定して、叙実(疑問できる)・叙想(疑問できない)の別を設けると、現代語のモダリティ…

松本朋子(2011.3)「いかにも」の歴史的変遷

松本朋子(2011.3)「「いかにも」の歴史的変遷」『日本語・日本文化』37 要点 標記の問題について考える 古くは「否定」「任意」の2用法で用いられ、この段階では不定語としての性格を色濃く持つ これは、不定語イカニが選択対象の要素である前提集合を持つ…