野村剛史(1996.5)「ガ・終止形へ」『国語国文』65(5)
要点
- 「ガー終止形」の発達について考える
- 上代から中古に見られるノ・ガの下接語・構文の変化は以下の通り
- 係り結びが、連体形句と呼応する「〈ーカ・ヤ・ソ〉〈ーノ・ガー連体形〉」の語順を守らなくなり、「ーノ・ガーカ・ヤ・ゾ・ナム」などの語順が普通に見られるようになる
- 連体ナリの主格として現れる
- 連用句内の出現や終助詞を持つ文中での出現、引用句、連体止めの例も増える
- 主格の「連体形ガ」について考えるために、「連体形○」(無助詞準体句)と比較する。両者の使われ方をまとめると、
- A 終止形終止 B 終止的述語(連体形、已然形) C 非終止的述語(連体・接続・助詞など)
- 中古では無助詞がAに、ガがCに係る傾向が強い
- 無助詞は終止形述語に係り得るので、「その他の係り先B, Cをガに譲り渡している」
- 一方でガのBの例もナリを中心としていくらかあり、これはガの用法拡大の結果である
- 中古末期~中世にかけてこの均衡が崩れていく
- 説話でその傾向が見え始め、軍記でさらに拍車がかかる
- 連体形ガが無助詞ガの占めていた位置を侵食したと考えてよい
- その要因を考える
- 「無印の用言の連続を避けるため」に、その手段の一つとして、ガを使用したと考える
- 連体形ガー終止と比べると、Nガー終止の伸び方は僅少で、Nガに引っ張られたとは考えにくい
- ただしこれは、連体形終止が一般化していないと採れない説である(そうでなければ「主語の連体形と述語の連体形の区別がつきにくい」状況にならない)
- 以上は無助詞側の事情で、ガ側の事情としては、「―ガ―連用句―終止」のようにしてガが露骨に係らないようにすることで、終止形に係ることができたのではないか(むすめふたりありけるが、かくとききて参りたりけり・宇治拾遺)
- 「無印の用言の連続を避けるため」に、その手段の一つとして、ガを使用したと考える
雑記
- 学生ってどんな先生のこともかわいいかわいい言うよな~、で思い出したけど、そういえば「野村先生かわいい勢」もいた