蔦清行(2006.10)ミとミト
蔦清行(2006.10)「ミとミト」『国語国文』75(10)
要点
- 上代のミトはミ語法+引用のトとは考えにくく、
- ミ単体が失った「主観的判断」の意を明確に示すために、新たにトを援用した形式と考えられる
前提
- ミ語法にトの後接するミトの形について考えたい
- 力を無みと籠もり居て(万3972)
ミ語法とミト
- 蔦(2004)のミ語法の理解
- 本質的な意味は「主観的判断」であり、
- 文脈から「原因・理由」の意味が解釈され、
- 単にその場の状況を客観的に形容する「客観的形容」の用法も存する
- ミトもこれに準ずるものとして理解できる
ミトのト
- とすると、ミトは「ミ語法+引用のト」で、ミ語法の解釈は~ミが担っているようにも見えるが、引用のトとは考えにくい性質が2点ある
- 1 ミトの後に発話・思考動詞のイフ・オモフが来ない
- 2 「後に続く形」をトが承けているという点も異質
- ~マデト、などの連用成分を承ける例もあるが、そうした例に比してもミトの例は多い
- ミトは、ミ語法単体の「主観的判断」の意が弱まったために、その領域を担うようになったものと考えられる
- いたはしとかも(3339)/いたはしみ(4211)のような類似性により、引用のトがミの意味を補うために付加され、
- 「語尾的なものであるという性質のために、ミトの形のトは、意味の面でこそ通常の引用のトと殆ど変わらない面を持つが、前後に続く語などの文法的な面では、引用のトと大きく異なる現象が見られたのではないだろうか」*1
~ヲ~ミト
- 属性形容詞ミの場合のみ、ミトは必ずヲを取る(ミ語法にはその制約はない)
- 情意形容詞は主観的判断に近い意味を有するが、属性形容詞はその限りでないので、主観的判断であることを明瞭に表すためにヲが要請されたと考える
- 「トを明示するだけではまだ十分でなく、ヲを取ることによって、〈主観的判断〉であることをさらに明瞭に示さなくてはならなかった」*2
雑記
- もうその~、あ~あとプレゼンもよかった、みたいな授賞理由やめませんかね