岡村弘樹(2021.3)「形容詞型の活用とミ語法」『国語国文』90(3).
要点
- ミ語法を形容詞型活用の枠組みで考え、その位置づけを検討する
- 上代の形容詞型活用は、中古以降と以下の点で異なり、「動詞的なものと形容詞的なものという性格の異なる形態が混在していた」
- カリ活用がなく、ケがム・ズ・バ・ドを下接する
- ただし、コソは連体形で結ぶので、ケが已然形でして確立していたわけではない
- このケは、「動詞とともに用言としての述語性をそなえていこうとする」(山口堯二1980)もので、一方、補助活用の整備は「動詞とは異なる品詞として独立しようとする傾向」を持つ
- カリ活用がなく、ケがム・ズ・バ・ドを下接する
- 以下、ミ語法と非ミ語法の差異を見る
- 非ミ語法の連用形は大半が修飾法であるが、ミ語法には修飾法がない
- カモが下接するとき、
- 非ミ語法+カモはシク活用(情意性)に、ミ語法+カモはク活用(情態性)に偏る
- 動詞カモは思ホユ、オモフ、恋フ・恋ヒ渡ルなどの情意的な動詞が多く、非ミ語法と同じ傾向を持つ
- 「情態性の形容詞のミ語法」と「情意性の形容詞の非ミ語法」「情意性の動詞」と同様であることより、ミを見ルと関連付ける説(蔦2004)が想起される
- (ミ語法が「見」字で記されたものからその結論を導く蔦説は、本来の語源と異なる語源意識による可能性が捨てきれないものの)
- 古い上一段の型は全て -i で、ル・レは二次的に備わったものと考えられる(岡村2018)ので、この型を想定してミ語法の用法の説明を試みる
- ミ語法の諸用法について考える
- まず連用形には、修飾語性連用用法(~ミオモフ)と、(述語性連用用法(原因・理由)があり、
- ~ミトは終止形、
- 名詞に続く「泊瀬川早み早瀬をむすび上げて」(2706、修飾語性連体用法)と、ミカモ(述語性連体用法)は連体形か
- 已然形の例はなく(ミコソは恋ふれこそと同一視できない)、命令形・未然形と考えられる例もない
- 「未然形という活用形が示す未実現性がミ語法の「見る」という性質に適さなかった」
- ミが助動詞・助詞を下接しないことを考えると、「ミ語法が動詞的な活用語尾のうち、被覆形的な語尾としてケが、露出形的な語尾としてミがそれぞれ採用された」とも考えられそう
- ミは「形容詞で表現される事態を視覚によって捉えるという形式」として形容詞型活用の活用語尾に採用されたものと考えられる
- ミがキ・クに先行して成立し、ミの修飾語性の用法がこれらに奪われていったという過程が想定できる
雑記
- どこかから今度出る百科の需要が謎すぎる
- 「項目とか目次とりあえず決めて、身内や知り合いに書かせる」みたいな企画、もうやめた方がいいと思うんやが