後藤睦(2019.6)『宇治拾遺物語』のノ・ガ尊卑の実態について:「ノ・ガ尊卑説」再考のための端緒として
後藤睦(2019.6)「『宇治拾遺物語』のノ・ガ尊卑の実態について:「ノ・ガ尊卑説」再考のための端緒として」『語文』112
要点
- 中世前期のガノに尊卑による使い分けはないが、
- 一部そう見えるために、過剰般化された規範も存した
前提
- 規範としてのガノ尊卑が、実態としてあり得たかを検証する
- 規範として記述は例えば、
- 古今集注(12C後)で「うるはしいういはゞ」ノ、「さくることば」にはガ
- 宇治拾遺の「「さたの」とこそいふべきに…「さたが」といふべき事か」
- 名語記、大文典などなど
- 尊卑に沿って分布するという傾向はあるが、その例外も指摘されている
宇治拾遺の実態
- ノ・ガの上接語によって分布するという野村説に沿う結果にも見えるが、例外もある様子
- 固有名詞にノ、それ意外にガが付く場合がある
固有名詞の場合
- 話し手が自称する場合は全てガ(人称代名詞と並行的)
- 天皇などの後続、役職や地位などは全てノ
- こうした例を除いて、地の文か会話文かで分類すると、
- 固有名詞の場合、ノ・ガは尊卑に基づいているとは言い難い
人間名詞の場合
- 同じ説話でノ・ガ両用の名詞があり、尊卑に基づくとは言い難い
- 郡司のもとに/郡司がもとに(注7、これは照応性が関わるか?)
解釈
- 固有名詞は主にガ、人間名詞は主にノという分布で、尊卑には基づかない
- 「さたが衣」のケースは、「天皇には必ずノが付く」という「ある種尊卑にもとづく使い分けにも見える使用状況」が規範意識へと過剰般化された可能性がある
雑記
- 去年ベランダで育てたハーブのレビューをしていきます
- バジル:ほっといてもたくさん増える。適当に剪定して冷凍しておくといざというときに使えてよい。実はお茶としても飲める。