青木博史(2014.10)接続助詞「のに」の成立をめぐって
青木博史(2014.10)「接続助詞「のに」の成立をめぐって」青木他編『日本語文法史研究2』ひつじ書房
前提
- 以下の2点に留意しつつ、ノニの成立・発達について考えたい
- ノ+ニの構造をどのように把握すべきか
- 「意外感」「不満」の意味の出どころ
ノニの出自と名詞句の脱範疇化
- 本稿はノニを、名詞節…ノ+格助詞ニ 出自として捉える
- この構造変化は、ガ・ヲ・ニなど、助詞の前後が述語で挟まれる場合だけでなく、
- 名詞句の場合も起こる(cf. ホドニ)ので、以下は自然な変化であろう
- [名詞句[ 述語連体形+ノ]ニ][ 述語]→[述語句[ 述語連体形+ノニ][ 述語]
- …ノを名詞句と見るにあたり、ノの発達について観察しておく
- ノは代名詞から出発し、モノ・ヒト型→コト型の順に発達するが、近世にも完全には定着しない(青木2005)*1
- 述部においては連体ナリの後継として、[[…ノ]ダ]→[[…]ノダ]が成立し、
- この変化はヨウダ、ハズダ、ワケダなどの名詞句の脱範疇化と同様である
- 以上より、ノニの出自はひとまず名詞句…ノ+ニと結びつけて問題ないだろう
ノニの成立と定着
- ここで、逆接意外の不満・意外感などの意味が、ニの格的意味と連続性を持たないことについて考える
- ノニは成立初期においては必ずしも不満感を表さないので、後発的に定着したと見るわけだが、
- 準体助詞ノは「あってもなくてもよい時代」が200年ほど続いたわけだが、その中で、φとノの対立が意識されるようになり、
- 「述部において「の」が用いられると「承前性」「既定性」に基づく表現が作られる」(p.96)
- このことにより、「話し手の知識に基づく予測と異なる事態」という不満・意外感の意味が生じたと考える
- 古代の連体ナリ・現代のノニはその「承前性」によりどちらも推量形に後接しない(*だろうのだ)が、成立初期は「うのに」の例がある
- これはニの機能と同様であって、ノニの完全な確立期がさらに遅れることを示す
- 成立初期に、~ダニに倣った~ダノニがあることも並行的に捉えられる
- (教訓として)文法変化は、発生、発達、定着のいくつかの段階で考えたほうがよい
雑記
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