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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

吉田茂晃(2004.3)文末時制助動詞の活用形について

吉田茂晃(2004.3)「文末時制助動詞の活用形について」『山辺道』48

前提

  • 吉田(2001)
    • 会話文における弱活用の連体形終止の用例は終止形のそれよりもむしろ多く、
    • 連体形は叙述の流れを切るところにその本質がある
    • 動詞述語文で係助詞と文末活用の関係が確立した後に、形容詞にもそれが波及したのではないか

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  • ということを踏まえつつ、時制の助動詞の文末の活用形を考えたい

調査と分析

  • キは、
    • 地の文での終止形終止率が少なく、已然形終止の例が多く、異例
      • 文終止の機能は不十分か
    • 会話文ではそれほど終止形終止が少ないわけではないが、「発言権の移動のない」位置(発話のまとまりの途中)に多く現れるので、やはりキは「不十分終止形式に近いもの」として用いられたのではないか
  • ケリは、地の文においても会話文的な分布を保ち、いわゆる「物語る」性質がここからも見て取れる
  • ツとヌは、
    • 地の文においてはほぼ終止で大差ないが、
    • 会話文においてはツは動詞的(連体形終止が多い)、ヌは形容詞的(終止形終止が多い)
  • タリ・リは、
    • 地の文はアリの分布に近く、
    • 会話文の終止形は形容詞とアリの中間的数値*1
    • なお、ヌ・タリ・リは会話文に已然形終止が少ないが、「実現済の状態」を提示するという点が何か影響するか

雑記

  • がんばるぞ16

*1:これは、下の已然形を省いて、終止形:連体形の比を比較すべきところだろうか。