ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

吉田茂晃(2001.3)文末用言の活用形について

吉田茂晃(2001.3)「文末用言の活用形について」『山辺道』45

前提

  • 係り結び研究は係り結び文だけを見ているが、用言述語全例を見て考えるべきではないか
  • 弱活用、アリ、形容詞の終止・連体・已然形の例を考える
  • 資料を以下の4類に分け、地の文・会話文に分けて考える
    • 1 地の文で語るもの:大鏡枕草子
    • 2 仮名日記
    • 3 歌物語
    • 4 作り物語

調査結果

  • 弱活用動詞は、地の文では、
    • 8割が終止形終止、連体形終止は14%, 已然形終止は3%未満
    • 連体形終止のうち、
      • 3分の2がゾの係り結び、残りがいわゆる連体止め
      • カやヤ、不定語の係り結びは1%未満
    • ナムもほぼないこと、疑問文が少ないことは地の文の性質に帰するだろう
  • 会話文では、
    • 終止形よりも連体形の方が優勢(17.6:58.4)
    • 連体止めすら15%あり、終止形終止と拮抗する
  • すなわち、文末の活用は「終止形と連体形のどちらであっても不思議ではな」く、
  • 係り結びまで含めれば、会話文末の弱活用は「終止形になるよりは連体形になるほうがむしろ普通」である
  • 形容詞述語は、
    • 地の文の終止形への集中傾向が強く、
    • (弱活用とは異なり)会話文でも終止形で終止する例が多い
      • 連体止めも、1%台に留まる
  • アリの場合、
    • 地の文は弱活用と同様の傾向、
    • 会話文は弱活用と形容詞の中間

分析

  • 以下の2つの立場が取れるが、
    • 地の文同様、文は終止形で終止するのが常態だと考える
    • 会話文に準じて、連体形終止を中心と考える(終止形終止は不自然な「終止形式」)
  • どちらが正しい、正しくないではなく、両者の何らかの差が、地の文・会話文での出現の差に影響していると考える
    • 連体形終止は連体形の副次的機能とみなされることが多いが、生得的に終止機能が備わっており、
    • 一方で終止形は、叙述にまとまりを与える機能のみが備わっていると考える
      • (「昨日雨が降った」だけで会話が運用できないのと同様)
  • すなわち、終止形は結果的に「切れる」だけで、連体形は積極的に「切る」役割を持つのではないか
    • 形容詞とアリの場合はそれとはやや異なるようで、終止形でも積極的に「切る」ことができた様子
  • 係り結びについて検討されるとき、連体形終止はある種特殊現象とみなされてきたが、調査の限りではそうでもない
    • 会話文において、連体形終止は一般的な現象であり、「連体形にするために必要なエネルギーは、実は思われているほど大きくはない」

雑記

  • ンンンー試験、やだな