ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

Seongha, Rhee, 2012.5. Context-induced reinterpretation and (inter)subjectification: the case of grammaticalization of sentence-final particles

Seongha, Rhee. 2012.5. Context-induced reinterpretation and (inter)subjectification: the case of grammaticalization of sentence-final particles. Language Sciences 34(3), 284-300.

(コンテクストが誘発する再解釈と(間)主観化:終助詞の文法化を例に)

要旨

  • 韓国語における clausal connective 由来の終助詞(SFP)の形成について考える
    • これらのSFPは (inter)subjective な意味を広く担い、
    • syntagmatic には、主節の省略がトリガーとなって起こる
    • pragmatic には、主節の省略は、話し手が、無くなった主節を再構するように誘発する
    • 接続詞によってマークされた条件節*1と再構築された主節の関係性は、発話末の接続詞として慣用化され、文末の標識の機能を獲得する
  • このことを、韓国語の -nikka の歴史的なデータによって示す
    • -nikka は因果関係で節を結ぶ機能を持ち、
    • declarative の ta がついた tanikka は以下の色々な機能を持つ
      • contingency, contrast, adversativity, protest, reassertion, and emphasis
    • この意味変化を進めるのが、CIR(context induced reinterpretation)であり、 (inter)subjective な語用論的推論が、節省略による情報のギャップを埋めるのに用いられている
    • declarative を基盤とした SFP が、命令、疑問、希望などの他の文タイプのマーカーになったことは注目に値する
    • SFP の文法化は非常に速く起こり、その結果として、文末尾における sub-paradigm が形成された。それより後の形式はそれほど高頻度で使用されなかったが、SFPになることができた
    • すなわち、文法化のプロセスはパラダイムに基づき、関連する形式の類似構造からの類推によって起こる、ということが指摘できる

雑記

*1:prodosis とあるけど、 apodosis と protasis のコンタミ