ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山口堯二(2000.3)中世末期口語における「べし」の後身:『天草版平家物語』の訳語による

山口堯二(2000.3)「中世末期口語における「べし」の後身:『天草版平家物語』の訳語による」『文学部論集(佛教大学)』84

要点

  • 文語化したベシの後身について、原拠本平家と天草平家との対照から考える
  • ベシが残る場合、成句として当時の口語に残る
    • シカルベイ・サルベイ、ツベシイ、ベウモナイ・ベウハナイ、連体ベイ
  • 訳される場合、ウズ・ウが中心的で、
    • 中世のベシは「現実的な表示性が弱まり、観念的な表示性が強まる」(山口1999)が、それを踏まえて考える
    • 平叙文の場合にはウズが多く、ウズの例は全ての用法に見られる
    • 意志・勧誘・命令を表す場合、
      • 意志はウズ、勧誘はウズか命令形
        • 命令形の場合は、適当・当為などの対象的意義は切り捨てて、作用的意義だけを言い換えていることになる
    • 疑問・反語・仮定の場合、
      • 疑問の場合、ウズとウは均衡で、
        • ウズの場合は疑問の助詞による特定方式(ウズカ)に偏り、
        • ウの場合は疑問詞疑問文もある
      • 反語・仮定はウに偏る
    • ソウナが訳語になる場合も数例ある
  • 史的解釈、
    • ウズは中世において最も客観的な表示性を備える(山口1991)ので、ベシに近く、
    • 反語・仮定・不定疑問がウに偏るのは、ウズの客観性となじまなかったため
    • ソウナは推量より推定の側のもので、ウズと対等に並ぶものではなく、次の世代のものと見る

雑記

  • まとめてまとめていく