大鹿薫久(2004.6)モダリティを文法史的に見る
大鹿薫久(2004.6)「モダリティを文法史的に見る」尾上圭介(編)『朝倉日本語講座6文法Ⅱ』朝倉書店
要点
- モダリティを「判断のありように対応する意味上の概念」と規定して、叙実(疑問できる)・叙想(疑問できない)の別を設けると、現代語のモダリティの形式は以下の通り
- 古代語では以下の通り
- ベシ・マジは疑問文でも使用可能で、かつ使えるが、いわゆる客体的表現に限られる
- 客体的ベシは言い切る場合もあるが、それは言い切りのために叙実法になるだけで、ベシが叙実法を担うわけではない
- ベシ・マジは疑問文でも使用可能で、かつ使えるが、いわゆる客体的表現に限られる
- 古代と現代の異なりは、
- A 時制の区別がある(ム・ラム・ケム)
- B 否定専用の形式がある(ジ・マジ)
- C 仮想対象を表す形式が、一般的な想定対象(間接的対象)を表す形式と別に存在する(マシ)
- D 可能性判断と当然性判断が同ーの形式によって表される(ベシ・マジ)
- E 可能性があることを表す形式と可能性が非常に高いことを表す形式が同ーの形式によって表される(ベシ・マジ - カモシレナイ/ニチガイナイ)
- 中世~江戸初期においては以下の通り
- 外形上の変化の他に、
- 連体法がなくなる、ツラウ・ウズラウがあるなど、ラウに質的変化がある
- 「古代語の「らむ」のような対象性の軛から解き放たれている」
- ベシの衰退をウズが、マジ・ジの衰退をマイが補う
- ラシ・メリ・終止ナリに代わってゲナ・サウナが現れる
- 江戸中期以降、
- ウズが衰退することで叙想法が再編成される
- カモシレナイ・ニチガイナイとハズダが明治期に安定して多用
- マイも叙実法にシフト(このことによって安定し、ウズのような衰退を免れる)
- ダロウが一般化する一方で、ウは意志に傾いていく(ので、モダリティ形式ではなくなる)
- ウズが衰退することで叙想法が再編成される
雑記
- 会議がTeamsで行われるようになったので、会議中に堂々と ronbun yomeru