近藤要司(2019.3)「古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1998「古代語における感動喚体句表現の諸相について」『大阪市私立短期大学協会研究報告週』35)
要点
- 山田は感動喚体句を「一元性のもの」とするが、「中心たる体言と連体格」という2つの因子(どちらも観念語)が存在するので、一元的とは言えない
- その後の定義は、「直感的一元的」を重視し、主述相当を含みつつ、その対立を拒否するものとして把握するもの(川端)と、不完備句をむしろ中心に据えるもの(尾上・石神)がある
- これを踏まえて、古代語の喚体句について考える
- 古代語の喚体句は以下2種に分けられる
- 呼びかけに連続するもの
- ヨ:典型的感動喚体句には用いられない
- ヤ:上代にはないが中古には「形容(動)詞語幹+ノ+N」の形で見られる(をかしの事や)
- 呼びかけと連続しないもの
- カ:カモに比べれば少数で(見まくの欲しき君が姿か)、しかも中古にはさらに少なくなり、一語文的な在り方に限られる
- カモ:感動喚体句の典型で、カとは異なり一語文的には用いられない
- カナ:カモの衰退と入れ替わるように用いられるようになる、これも一語文的用法がない
- 呼びかけに連続するもの
- まとめ、
- 呼格体言を用いる表現でも、呼びかけと感動喚体句は異質である
- ヨ・ヤ・カは一語文を作るが、カモ・カナはつくらない
- 一語文と感動喚体句は、文末助詞から見ると性格の異なる表現である
- 散文では感動喚体句の連体修飾部は情意評価の語に限られる詠嘆的な表現で、この点でも単に遭遇した事態の中核を「呼ぶ」表現とは異質である
雑記
- 今週は近藤(2019)の第2部を読みます