ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

近藤要司(2019.3)『源氏物語』の助詞カナについて

近藤要司(2019.3)「中古の感動喚体句について(1)『源氏物語』の助詞カナについて」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1997『金蘭短期大学研究誌』28)

要点

  • 中古の感動喚体句、特にカナの特徴を考えたい
    • Nカナ、活用語カナ、他の助詞との比較
  • Nカナについて、
    • わざ・こと・さま・ものカナなど、事態や場面全体を抽象的に示すことが多い
      • 和歌のカナは具体的事物を指すことが多い
    • 散文の感動喚体句は内省を伴わないので、情意評価の連体修飾語の方に中心骨子があると考える(あはれなるわざかな)
  • 活用語カナは、
    • 情意ないし評価を眼目に置くという点(あはれにもあるかな)でNカナと共通し、
    • 情意評価の語が(連体修飾ほど一体性の強くない)連用修飾をするために、特にモが多く介在する(とり並べても咲きけるかな)
      • この点において、Nカナのような一体性はなく、主述二項の分離が明確化される
    • カナはこうして、~ハ~カナ 対象事態カナ の2通りの在り方で述体に接近し、喚体としての機能を失っていく
  • 他の助詞と比較すると、
    • 感動喚体句のヤはカナと共通点が多く、ヨは呼びかけや現代語の一語文の感動文に近いという点でカナとは異質である

雑記

  • 締め切りが延びたり延びなかったりする