ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

土岐留美江(2012.6)意志表現とモダリティ

土岐留美江(2012.6)「意志表現とモダリティ」沢田治美編『ひつじ意味論講座第4巻 モダリティII:事例研究』ひつじ書房

要点

  • モダリティの事例研究として意思表現について考えたい
  • モダリティ体系の中での意志の位置付けは、そもそもモダリティに組み込むかも含めて研究者によって大きく異なり(2節)、
  • 現代語では、ウ・ツモリダ・基本形の3形式が代表的で、それぞれ使い分けが存する
    • ウは話者の発話時の心的態度しか表すことができないが、ツモリは三人称や過去も表せる
  • 歴史的変遷をたどると、
    • ウは、かつて意志・推量(や可能性・未来)など多義的であり、root と epistemic が未分化であり、連体修飾節内に現れること、主文末で推量を表すことが現代語と異なる点
    • ツモリは「金銭の計算」の意の名詞ツモリがその意味を離れて意志用法を持ち、コピュラを伴って文末に位置することで文法化が完成する
    • 動詞基本形の意志の解釈が可能になるのは意志の諸条件を満たす場合に限られる。上代から見られるものの、(意味的に中立であるという)「動詞言い切り形の本質は基本的に変化していない」
  • 意志の意味が現れるためのメカニズムはウ・ツモリ・基本形のいずれも同様であり、このように文脈的な条件に左右されるという点が「意志」の大きな特徴である
    • モダリティ内での位置付けが難しく、扱いが異なるのもこのため

雑記

  • Celesteめちゃおもしろい