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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

高梨信乃(2017.11)「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から

高梨信乃(2017.11)「「しようと思う/思っている」と「つもりだ」:書き言葉における使用実態から」森山卓郎 ・三宅知宏(編)『語彙論的統語論の新展開』くろしお出版

要点

  • しようと思う/しようと思っている/つもりだ の3形式を、BCCWJにおける使用実態から比較する
  • 主節末では、疑問・モダリティがツモリに多く(~つもりらしい)、ヨウ系に少ない
    • ツモリダが「主語との意志をことさらに表示する性格」を持つことによる
    • ツモリの疑問文は非難・不満に偏り、これも「表示した意志への言及」であることが関与する
    • ツモリが文学に多いのも「意志のマーク機能」から説明可能で、
    • シヨウト思ウ系が知恵袋・ブログに出やすいのは逆に「話し手自身の意志を伝達する表現」としての性格が強いため
  • シヨウト思ウは動詞後続が可能(しようと思い始める)*1で、様態節・順接条件節に多い
    • 意志の付帯はスルツモリデでも表せるが、ヨウト思ッテの方が多い
  • ツモリダは時間節では見られない
    • 逆に、ヨウト思ウ系は意志の生起・持続を時間軸上に捉えることができる(*つもりのとき)

雑記

  • 頻度の出し方の説明が丁寧で、学部生に読ませたい

*1:「「思う」というル形の動詞を末尾にもつことによって可能になっている」はまあそりゃそうだろうけど、十分条件でしかなくて何かの説明にはなっていないだろう