ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

岡部嘉幸(2019.5)洒落本の江戸語と人情本の江戸語:指定表現の否定形態を例として

岡部嘉幸(2019.5)「洒落本の江戸語と人情本の江戸語:指定表現の否定形態を例として」『国語と国文学』96(5)

要点

  • 洒落本では、江戸語で融合・長呼のジャア+音訛ネエ、上方で融合・短呼のジャ+ナイが典型的であるが、これが江戸語一般に言えるのかを考えたい
  • 非丁寧体と丁寧体に分けて考える
  • 江戸洒落本において、
    • 非丁寧体では、ジャアネエが典型的で男女ともに用いるが、音訛形のネエの使用率は男性が圧倒的に高い
    • 丁寧体では、融合のジャアの使用率が非丁寧体より低く、否定形態はゴザリマセン・ゴザンセンに偏る
  • 人情本において、
    • 非丁寧体では、男性にジャアネエ、女性にジャアナイが典型的
    • 丁寧体では、男性はジャアゴザイヤセン・ゴゼエセン(ただしそもそも丁寧体をあまり使わない)、女性はジャアアリマセンが典型的

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p.127

  • 以上のまとめ、
    • 非丁寧体について、長呼形ジャアを使うのは江戸語全般の特徴だが、音訛形ネエを使うのはそうではない
    • 丁寧体について、否定表現の部分は、特定形式を江戸語全体の典型的形態を特定とするのが難しい
    • 洒落本では男女差がなかったが、人情本には男女差の仕様形態の差異が顕著であった

雑記

  • ドライアイで労災おりろや