ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

北原保雄・小林賢次(1985)言語資料としての『続狂言記』(条件表現の節)

北原保雄・小林賢次(1985)「言語資料としての『続狂言記』」『続狂言記の研究』勉誠社 の、昨日の続き

仮定表現

  • この頃の順接仮定条件表現の重要な点3つ
    • 1 未然形+ばの衰退
    • 2 ならば・たらばの発達
    • 3 仮定の「已然形+ば」の発達
  • 1 未然形+ばの衰退については、多くがナラバ・タラバの例で、これに沿う
    • 未バの例はラ変と四段の数例しかない
    • なお、ズハ・ズバの両形が見られるが、これらは「ずは」「くは」が動詞の場合と同様の性格を持つようになったことを示すものである
      • をかずはなりますまい / をこさずばいころすぞ
  • 2 ならば・たらばの発達
    • タラとタラバは拮抗し、ナラはむしろナラバよりも多い。ナラが助動詞ナリの未然形であるという性格を脱して接続助詞になっていることを示す
    • 接続詞的ソレナラも多く見える
    • 上接語も広範(マイナラ、命令ナラ)であるが、「たならば」は用いられない(大蔵流はタナラバに統一される)
    • 小林(1979)も参照

hjl.hatenablog.com

  • 3 仮定の「已然形+ば」の発達は、虎明本と同様の状態にある
    • 虎明本においてすでに恒常条件の表現が発達し、仮定条件的性格へと発達する姿が認められる

接続詞

  • 特に仮定条件の接続詞について、サラバからソレナラバへの移行(虎明本と虎寛本の中間段階)が見える
    • その他、「その儀ならば」があり、改まった場所に使われるものなのに「その儀なら」もある点、「いかにも「狂言記」らしい」
  • その他、
    • 『拾遺』はソレナラの比率が上がる(これは時代の進行による)が、サアラバも見られる
    • 正篇のソンナラ(バ)、シタラ(バ)の例は正篇特有
    • 大蔵流においてサテハはスレバに交替するが、続はスレバ発達期の状態を示す

逆接確定条件

  • ケレドが2例、ケレドモが4例あり、ウ・タ・ナンダを承接する
    • 正篇ではマイ・ウがそれぞれ2例で、続はそれより承接関係が多様
  • ケレドモには以下の4段階があり、「狂言記」は次の2段階目に位置する。これは、已然形ドモの衰退と並行する(ガもまた逆接条件であることを明示する力に欠けたところがある)
    • 発生期(マイケレドモ・ウケレドモ)
    • 発達期1(タイケレドモ、形容詞ケレドモ)
    • 発達期2(すべての活用語ケレドモ)
    • 確立期

雑記

金麦糖質75%オフ、この類のものの中で言うとかなり飲みやすい