ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

小島聡子(1999.4)複合動詞後項「行く」の変遷

小島聡子(1999.4)「複合動詞後項「行く」の変遷」『国語と国文学』76(4)

要点

  • Vユクの意味変化について考える
    • ユクは空間の移動もしくは時間の移動を表すが、本動詞はほぼ空間の移動を表す
  • 調査、
    • 中古は時代が下るに従って、空間移動の意味で用いられることが少なくなり、時間的な過程の進行や継続を表すようになる
    • が、中世にはまた再び空間移動を表す用例が増えてくる
  • これは用例数の変化というより、何か質的な違いの現れであろうと考えられるので、前接動詞に注目すると、
    • 中古・中世共通のものに、
      • ア 移動とは関係ない並列(おもひゆく)
      • イ 移動の手段・様態(あゆみゆく、とびゆく)
      • ウ 動詞そのものが空間移動の意を含む(うつりゆく、かへりゆく)
    • 共通しないものを見ると、
      • アは中古>中世であり、アよりも補助的なイは中古<中世
      • 中世特有のものには(サ)ス・(ラ)ルが前接するものも多く、これもユクの補助動詞性の強まりの現れ
    • 中世の非空間的なユクは一部の資料に限定され、しかも通常の使用とは言い難い(すなわち、非空間的なユクは既に日常的表現ではなくなっていた)
    • なお、Vモテユクも全体として減少傾向にあり、意味もユク相当になって衰退してゆく
  • テユクについて、
    • 中古のテユクには空間移動の例しかなく、Vユクと意味は被らないが、中世のユクが空間の移動へと偏ることでテユクとも意味が近くなる
    • これがVイク>テユクの交替の契機となったか?

雑記

  • ちょっとさぼってしまった