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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山本佐和子(2020.3)中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考

山本佐和子(2020.3)「中世室町期における「ゲナ」の意味・用法:モダリティ形式「ゲナ」の成立再考」『同志社国文学』92.

要点

  • ゲナが「本体把握」「内実推定・原因推定」を主張し、ゲナリとの関係性からその意味が生まれる理由を考えたい
    • cf. 大鹿1993, 1995, 2004, 岡部2011
  • ゲナの意味・用法、
    • 形態的に:ゲナはゲナリに比して形態的な制約が大きく、活用は「ゲニ候」「…ゲデ、~」しかない
    • 原則は終止形+ゲナであるが、テアル・オ~アルの場合にアリゲナがあり、「良い」にヨゲナ・ヨイゲナの二形態が認められる
      • アルや、話者の判断・評価を表すヨイで、「接辞とモダリティ形式とが近似する」…(ア)
    • 意味的に:ゲナはラシイ同様、「所与の事態からその背後にある、全体としての事態を把握している」という「推定」の判断(本体把握)を表す
    • 構文的に:ゲナはホドニ節を受ける例が多い
      • そこには焦点の移動が認められ、ゲナの前接部分が名詞句になっている可能性がある…(イ)
  • ゲナの発達について、
    • 青木2007は、a. 語「~ゲナリ」、b. 名詞句「~ゲ」+「ナ」、c. 文「~」+「ゲナ」 の3段階を想定するが、当時のコピュラはナリではなくヂャであるので、ゲ+ナという異分析は起きないのではないか
    • このとき、上記アはaとcの連続性を、イはcの前に名詞節(準体句)+ゲナ の段階を想定すべきことを示すものと考えられる
    • ゲナリの方を見ると、室町には連用形ゲナリが「気配・存在が感知される状態」(きたなげなり)のみならず、「個別・具体的な事態の属性」(思ひたりげなり)を表すことができるようになっている
    • 漢語形容動詞語幹への後接を経て名詞+ゲナが可能になったこと、対義的でかつゲが形態的に独立するゲ(モ)ナシの存在があったために、ゲナの前接語が早くに連体形になったものか
    • 連用形ゲナリの「個別~」の用法、名詞に直接つく用法が生じたことで、「前接する活用語の連体型は、「ゲ」への連体節ではなく、…名詞節(準体句)であると捉えられ、「ゲナ」は語を形成する接辞から、文法的な要素へと変化したと考えられる」

雑記

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