ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

土居裕美子(2000.10)平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙

土居裕美子(2000.10)「平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙」『鎌倉時代語研究』

前提

  • 平安和文と中世和漢混淆文の複合動詞語彙を考える
  • さわぐ の前後項をそれぞれ以下の3つに分類
    • 行動・動作:あけさわぐ/さわぎたつ
    • 心情・感情:おぢさわぐ/さわぎまどふ
    • 発話・発声:なきさわぐ/さわぎささやく

平安・鎌倉の「さわぐ」

  • 源氏と延慶本平家を比較すると以下の通りで、
    • 源氏にVさわぐが多く、延慶本平家にさわぎVが多い

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p.710

  • 範囲を広げて、中古和文、中世和文、中世和漢混淆文を比較すると、
    • 中古和文はVさわぐが多く、和漢混淆文はさわぎVが多い、中世和文はどちらかというと和漢混淆文に近い
    • 前項の意味的区分は、中古和文に行動・動作が多く、和漢混淆文では心情・感情も増える
  • 「さわぎもとむ」「もとめさわぐ」を比較すると、
    • 捜索の喧騒を、中古中世和文では「もとめさわぐ」が、和漢混淆文では「さわぎもとむ」が担う
    • これは時代差ではなく、文章ジャンルによる差ではないか
  • 中古和文に少ないさわぎVの中で、さわぎ+状態(あふ・みつ・ゐる)のみは例外的に見られるが、和漢混淆文では「さわぎあふ」に偏る
    • 「さわぎまさる」を含む「~まさる」、「さわぎみつ」を含む「~みつ」は和文特有の複合動詞のよう

雑記

  • 今年はがんばりましょうね2