ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

吉井健(2017.11)「白妙の袖さへ濡れて朝菜摘みてむ」:万葉集のテ形による副詞句

吉井健(2017.11)「「白妙の袖さへ濡れて朝菜摘みてむ」:万葉集のテ形による副詞句」『万葉集研究37』塙書房

要点

  • 古代語で付帯状況を表すテ形節(論文では「テ系句」)に、主体の異なる例があること(袖さへ濡れて朝菜摘みてむ)に注目し、テ形節の様相について考える*1
  • 連用形/テ形+思考動詞(思ふ・思ほゆ)については、
    • 形容詞連用形+思ほゆ・思ふ には「情意表現への傾斜」があるのに対し(楽しく思ほゆ・1015)
    • 形容詞テの場合にはそういった例がない
    • 動詞連用形+思ほゆ・思ふ の例も乏しく(~欲り思ふ を除く)
    • 動詞テ形は、形容詞連用形とふるまいが似る(心には燃えて思へど・2932)
  • 「動詞+テ」が修飾句を構成する場合、自動詞テ形が主句と別の主語を取ることがあり、これは他動詞(の形態を取る動詞)についても(山田孝雄は自動詞の場合のみを「修飾句」として切り出したが)「同時併存的な付帯状況」として見るべきものである
    • この「修飾句」はしばしば程度性を帯び(影さへ見えて咲きにほふ・4512)、その「程度性」は「AモBニ」(心もしのに)と同質のものと見られる

雑記

  • 上代って今でも文学と語学が一緒の論集が多くて、手に入れにくいことが結構あるね

*1:構成とか問題意識が示されないタイプの論文をすらすら読めなくなってしまった 夏バテかも