ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

方言

舩木礼子(1999)意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論

舩木礼子(1999)「意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論」『待兼山論叢 日本学篇』33 要点 ①福島県喜多方、②宮城県鳴瀬、③秋田県大館、④秋田県五城目、⑤静岡県沼津、⑥兵庫県稲美の6地点のベーを対照する 接続において、 ①②③④はほぼ一段・カ変・サ…

木部暢子(2019.3)諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差

木部暢子(2019.3)「諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 COJADSモニター版を使って諸方言の推量表現を整理する 述語のタイプ(名…

森勇太(2018.5)近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に

森勇太(2018.5)「近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に」小林隆(編)『コミュニケーションの方言学』ひつじ書房 要点 申し出表現の地理的なバリエーションを考える (その荷物は私が)持たしてもらいます(GAJ320・京都…

津田智史(2015.9)トル形の表す意味

津田智史(2015.9)「トル形の表す意味」『方言の研究1』ひつじ書房 要点 トルは主にアスペクト的な結果の局面を表すとされるが、「結果」を基本的な意味とせず、オルの意味から解釈されるべきである 結論、トル形は「動詞の表す事態が起こり、何らかの形で…

村上謙(2012.3)明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する

村上謙(2012.3)「明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する」『近代語研究』21 要点 否定辞ヘンの成立にはハセヌ→ャセヌ→ャセン→ャヘン→ヘンが想定されるが、以下の4点の問題がある 成立要因が問われていない そもそも音変化説…

駒走昭二(2017.10)ゴンザ資料におけるカス型動詞

駒走昭二(2017.10)「ゴンザ資料におけるカス型動詞」『日本語の研究』13(4) 要点 ゴンザ資料のカス型動詞を取り上げ、18C薩隅での特徴を整理する 形態的特徴、 akasuが多い(中世の中央語と同様) 半数がラカス 音節数は4音節が多く(中央語は5音節)、2音…

小西いずみ(2013.10)西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化

小西いずみ(2013.10)「西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化」藤田保幸(編)『形式語研究論集』和泉書院 要点 トイウのテ形がト同様の働きをする現象について考える ヤメタイユーテ ユータ(富山市・やめたいと言った) データ、 富山…

木部暢子(2020.3)九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより

木部暢子(2020.3)「九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより」『坂口至教授退職記念日本語論集』創想社 要点 九州のゴトアルが様態と希望を表すことに対する2つの従来説 形態的特徴と意味の結びつきが排他的に決まる(ウゴトアル→希望/連体形+ゴ…

彦坂佳宣(2020.3)一・二段活用のラ行五段化における使役形の動向

彦坂佳宣(2020.3)「一・二段活用のラ行五段化における使役形の動向」『国語語彙史の研究』39 要点 「他の活用とやや異なる面のある」使役形の五段化について考える 個別的要因(九州南部の音変化の激しさ、東北のレバの優勢さ、新潟のローの誘引など)の関…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(動詞活用における方言形成史のアウトライン)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆2002「日本語方言の歴史」江端義夫編『朝倉日本語講座 10 方言』朝倉書店) 要点 これまでの3点をもとに、動詞活用の歴史を整理する 方言と活用の関係2種 A …

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(一段活用動詞などに見られるラ行五段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1996「動詞活用におけるラ行五段化傾向の地理的分布」『東北大学文学部研究年報』45) 要点 オキル・ミル・アケル・ネル・スル・クル×否定・使役・意志・過…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(二段活用動詞などに見られる一段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1997「動詞活用における一段化傾向の地理的分布」加藤正信編『日本語の歴史地理構造』明治書院) 要点 方言における一段化の問題について考える ① いわゆる…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(動詞「起きる」を例にしたケーススタディ)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1994「活用の方言分布と歴史:「方言文法全国地図」の「起きる」について」『北海道方言研究会20周年記念論文集 ことばの世界』) 要点 日本語方言の活用と…

上林葵(2019.8)関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示

上林葵(2019.8)「関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示」『日本語の研究』15(2) 要点 関西方言のジャはヤと類似するが、ジャは限定的なモーダルな働きを強く帯びる働きを持つ (本の所有者が誰かを単に尋ねられて)そ…

木部暢子(2006.5)九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」

木部暢子(2006.5)「九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」」『筑紫語学論叢Ⅱ』風間書房 要点 長崎で、能力可能だけでなく外的条件可能にも、労力を必要とする場合に限ってキルが使われる(木部2004)ことについて考える 長崎市…

木部暢子(2004.3)九州の可能表現の諸相:体系と歴史

木部暢子(2004.3)「九州の可能表現の諸相:体系と歴史」『国語国文薩摩路』48 要点 九州方言の可能表現は、~キルと~(ラ)ルルの2種類 キルは能力可能、ラルルは外的条件可能 (2~4節、概観・調査概要・問題点) 久留米市・大牟田市・熊本市:キルが能…

柚木靖史(2020.2)角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)

柚木靖史(2020.2)「角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)」『広島女学院大学論集』67 要点 広島の郷土資料の角筆を見ることで、近世の安芸・備後地方の口頭語の実態を考えたい (10…

平塚雄亮(2019.7)甑島里方言のbasi

平塚雄亮(2019.7)「甑島里方言のbasi」『阪大社会言語学研究ノート』16 要点 九州方言でとりたて助詞的に使われる basi は、里方言では形式名詞的にも使われる tanpoo=ni=basi ita=to=jaroo / 田んぼにでも行ったんだろう sir-an basi=n goto / 知らないわ…

小西いずみ(2011.7)出雲方言における「一段動詞のラ行五段化」に関する覚書

小西いずみ(2011.7)「出雲方言における「一段動詞のラ行五段化」に関する覚書」『論叢 国語教育学』復刊2 要点 出雲方言におけるラ行五段化(見る:未然形ミラン、命令形ミレ)を記述すると、 否定・命令・使役・意志形と、とりたて否定形ミリャーシェン・…

福嶋秩子(2017.5)準体助詞の分布と変化

福嶋秩子(2017.5)「準体助詞の分布と変化」大西拓一郎編『空間と時間の中の方言:ことばの変化は方言地図にどう現れるか』朝倉書店 要点 FPJDとGAJの準体助詞の分布と変化を概観し、新潟方言のイガンダベ(行くのだろう)について考える GAJとFPJDの準体助…

小林美沙子(2010.3) 新方言として終助詞化した「し」の命令・禁止・勧誘表現について

小林美沙子(2010.3)「新方言として終助詞化した「し」の命令・禁止・勧誘表現について」『首都圏方言の研究』1-1 要点 接続助詞シに由来する終助詞シに、「しろし」などの命令・禁止・勧誘が見られる 調査 命令・依頼・禁止にはつかないとされているが、つ…

米田正人ほか(2019.9)鶴岡市方言における共通語の格助詞「に」にあたる用法:格助詞「サ」の用法を中心として(鶴岡の発展的調査から)

米田正人・佐藤亮ー・水野義道・佐藤和之・阿部貴人・津田智史(2019.9)「鶴岡市方言における共通語の格助詞「に」にあたる用法:格助詞「サ」の用法を中心として(鶴岡の発展的調査から)」『方言の研究 5』ひつじ書房 要点 鶴岡のニの用法差・年層差に、…

平塚雄亮(2019.3)福岡市方言の準体助詞にみられる言語変化

平塚雄亮(2019.3)「福岡市方言の準体助詞にみられる言語変化」『中京大学文学会論叢』5 前提 福岡市の若年層によって、伝統的なトだけでなく、ノ・ンも用いられるようになっている が、どのような環境でそうなるかは報告されていない どういった環境で非伝…

坂井美日(2019.9)南琉球宮古語における準体の変化に関する考察

坂井美日(2019.9)「南琉球宮古語における準体の変化に関する考察」『方言の研究 5』ひつじ書房 要点 宮古語の準体にはゼロ準体と準体助詞 =su, =munu の準体があり、 ゼロ準体はコト準体から許容されなくなり、これは本土方言の歴史と一致する 準体助詞 su…

三宅俊浩(2018.11)近世後期尾張周辺地域における可能表現

三宅俊浩(2018.11)「近世後期尾張周辺地域における可能表現」『名古屋大学国語国文学』111 要点 近世後期の尾張において、以下の交替が確認される 五段動詞はレルから可能動詞へ(1) 一段・カ変はラレルからラ抜きへ(2) サ変はナルからデキルへ(3) 1,…

竹内史郎(2018.3)動詞「ありく」の文法化:平安時代語のアスペクト表現における一考察

竹内史郎(2018.3)「動詞「ありく」の文法化:平安時代語のアスペクト表現における一考察」『国語語彙史の研究』38 要点 アスペクト的に使われるアリクの文法化について記述し、 文法化研究と琉球諸語研究に位置付ける 琉球諸語の「歩く」 伊江島方言におい…

高山百合子(2015.8)佐賀方言における用言の「語幹化」

高山百合子(2015.8)「佐賀方言における用言の「語幹化」」『人間文化研究所年報(筑紫女学園)』26 要点 佐賀方言「ハヤカ」「リッパカ」など、カ語尾が語幹に取り込まれていることを指摘し、 これがラ行語末促音形にも見られることも示し、種々の現象を「…

大西拓一郎(2017.5)言語変化と方言分布:方言分布形成の理論と経年比較に基づく検証

大西拓一郎(2017.5)「言語変化と方言分布:方言分布形成の理論と経年比較に基づく検証」大西拓一郎編『空間と時間の中の方言:ことばの変化は方言地図にどう現れるか』朝倉書店 要点 周圏論への疑義と新しいモデルの提示 以下の仮説を提示する 1 言語変化…

彦坂佳宣(2019.3)カ行変格活用の全国分布とその解釈

彦坂佳宣(2019.3)「カ行変格活用の全国分布とその解釈」『国語語彙史の研究』38 要点 カ変の分布について以下の点を指摘 一段化したキの発現が人口減地方に見られ、規範が緩んだことによるものであること ベーへの接続の揺れが変種キの伸張を促したこと 広…

野間純平(2013.3)高知県四万十市西土佐方言における準体助詞

野間純平(2013.3)「高知県四万十市西土佐方言における準体助詞」『阪大社会言語学研究ノート』11 要点 四万十市西土佐方言の準体助詞について、以下の点を示す ガが基本的にノとパラレルで用いられること、 モノ準体に属格助詞を介する(ノガ)場合がある…