ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

方言

大西拓一郎(1999.11)新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって

大西拓一郎(1999.11)「新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって」『日本語学』18(13) GAJ151の打消過去の分布と中央語史を比較したい p.100 GAJ151「行かなかった」では、 東にナカッタ、西にナンダ ナンダ類を囲むよ…

藤原あかね(2021.3)静岡県中部方言における推量表現「ラ」「ダラ」について

藤原あかね(2021.3)「静岡県中部方言における推量表現「ラ」「ダラ」について」『阪大社会言語学研究ノート』17. 要点 先行研究の指摘と話者(若年層)の内省とのズレ4点を踏まえつつラ・ダラの用法を記述したい 現在は、ズラ・ダズラ・ツラが使用されな…

ローレンス・ウエイン(2011.10)琉球語から見た日本語希求形式=イタ=の文法化経路

ローレンス・ウエイン(2011.10)「琉球語から見た日本語希求形式=イタ=の文法化経路」『日本語の研究』7(4). 要点 本土日本語の=イタシ(タシ)には以下の経路が想定されているが、2つ目の変化は類型的には支持されない 痛し > 甚し > 希望 琉球語鳩間…

kepler.gl でGAJのデータをお手軽に可視化する

前提 WALS Online みたいなことが、方言文法全国地図(GAJ)でもできたらいいなあと思った。例えば、ズームできたり、クリックすると地点情報が出てきたり、フィルタがかけられたりしたらなんだか嬉しい。 kepler.gl というUberが公開しているオープンソース…

小田佐智子(2016.3)岐阜方言の原因・理由に表れるモンデ

小田佐智子(2016.3)「岐阜方言の原因・理由に表れるモンデ」『阪大社会言語学研究ノート』14 要点 岐阜のモンデの形式的・意味的特徴の記述、 形式的特徴、 デ・モンデのいずれも終止形接続(あるデ/モンデ)だが、モンデは連体形接続(簡単なモンデ)も…

金沢裕之(1995.5)可能の副詞「ヨー」をめぐって

金沢裕之(1995.5)「可能の副詞「ヨー」をめぐって」『国語国文』64(5) 要点 関西~中国・四国のヨーの歴史を明らかにしたい 江戸後期以降の調査、 戯作にヨーの例はなく(一荷堂半水作に偏るため?)、エは洒落本にのみ例あり 能力可能、外的条件可能、心…

三宅俊浩(2019.12)近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立

三宅俊浩(2019.12)「近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立」『日本語の研究』15(3) 要点 尾張のラ抜きについて論じたい 使用率の高い中国四国・東海東山が不連続であり、京阪・東京では使用率が低く、中央語史の観察だけでは成立過程の解明が困難…

内間直仁(1985.3)係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に

内間直仁(1985.3)「係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に」『沖縄文化研究』11 要点 中央語の係り結び衰退の要因は明らかでないが、琉球語が示唆する点がある 琉球の活用形について2点、 奄美・沖縄では終止形、連体形、du係結形が概ね区…

市岡香代(2005.3)栃木県岩舟町方言における意志・推量表現形式「べ」の用法

市岡香代(2005.3)「栃木県岩舟町方言における意志・推量表現形式「べ」の用法」『日本語研究(都立大)』25 要点 ベ一形式で意志・推量を表す地域と意志にベ・推量にダンベを分担する地域があり、標題地域はその境界にあたる 形態的特徴、 名詞・形容動詞…

高木千恵(2005.3)大阪方言の述語否定形式と否定疑問文:「〜コトナイ」を中心に

高木千恵(2005.3)「大阪方言の述語否定形式と否定疑問文:「〜コトナイ」を中心に」『阪大社会言語学研究ノート』7 要点 大阪方言における分析的な否定形式コトナイと、否定疑問形式コトナイカについて考える 述語の否定形式は以下の通りで、 p.74 これら…

舩木礼子(1999)意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論

舩木礼子(1999)「意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論」『待兼山論叢 日本学篇』33 要点 ①福島県喜多方、②宮城県鳴瀬、③秋田県大館、④秋田県五城目、⑤静岡県沼津、⑥兵庫県稲美の6地点のベーを対照する 接続において、 ①②③④はほぼ一段・カ変・サ…

木部暢子(2019.3)諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差

木部暢子(2019.3)「諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 COJADSモニター版を使って諸方言の推量表現を整理する 述語のタイプ(名…

森勇太(2018.5)近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に

森勇太(2018.5)「近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に」小林隆(編)『コミュニケーションの方言学』ひつじ書房 要点 申し出表現の地理的なバリエーションを考える (その荷物は私が)持たしてもらいます(GAJ320・京都…

津田智史(2015.9)トル形の表す意味

津田智史(2015.9)「トル形の表す意味」『方言の研究1』ひつじ書房 要点 トルは主にアスペクト的な結果の局面を表すとされるが、「結果」を基本的な意味とせず、オルの意味から解釈されるべきである 結論、トル形は「動詞の表す事態が起こり、何らかの形で…

村上謙(2012.3)明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する

村上謙(2012.3)「明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する」『近代語研究』21 要点 否定辞ヘンの成立にはハセヌ→ャセヌ→ャセン→ャヘン→ヘンが想定されるが、以下の4点の問題がある 成立要因が問われていない そもそも音変化説…

駒走昭二(2017.10)ゴンザ資料におけるカス型動詞

駒走昭二(2017.10)「ゴンザ資料におけるカス型動詞」『日本語の研究』13(4) 要点 ゴンザ資料のカス型動詞を取り上げ、18C薩隅での特徴を整理する 形態的特徴、 akasuが多い(中世の中央語と同様) 半数がラカス 音節数は4音節が多く(中央語は5音節)、2音…

小西いずみ(2013.10)西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化

小西いずみ(2013.10)「西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化」藤田保幸(編)『形式語研究論集』和泉書院 要点 トイウのテ形がト同様の働きをする現象について考える ヤメタイユーテ ユータ(富山市・やめたいと言った) データ、 富山…

木部暢子(2020.3)九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより

木部暢子(2020.3)「九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより」『坂口至教授退職記念日本語論集』創想社 要点 九州のゴトアルが様態と希望を表すことに対する2つの従来説 形態的特徴と意味の結びつきが排他的に決まる(ウゴトアル→希望/連体形+ゴ…

彦坂佳宣(2020.3)一・二段活用のラ行五段化における使役形の動向

彦坂佳宣(2020.3)「一・二段活用のラ行五段化における使役形の動向」『国語語彙史の研究』39 要点 「他の活用とやや異なる面のある」使役形の五段化について考える 個別的要因(九州南部の音変化の激しさ、東北のレバの優勢さ、新潟のローの誘引など)の関…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(動詞活用における方言形成史のアウトライン)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆2002「日本語方言の歴史」江端義夫編『朝倉日本語講座 10 方言』朝倉書店) 要点 これまでの3点をもとに、動詞活用の歴史を整理する 方言と活用の関係2種 A …

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(一段活用動詞などに見られるラ行五段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1996「動詞活用におけるラ行五段化傾向の地理的分布」『東北大学文学部研究年報』45) 要点 オキル・ミル・アケル・ネル・スル・クル×否定・使役・意志・過…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(二段活用動詞などに見られる一段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1997「動詞活用における一段化傾向の地理的分布」加藤正信編『日本語の歴史地理構造』明治書院) 要点 方言における一段化の問題について考える ① いわゆる…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(動詞「起きる」を例にしたケーススタディ)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1994「活用の方言分布と歴史:「方言文法全国地図」の「起きる」について」『北海道方言研究会20周年記念論文集 ことばの世界』) 要点 日本語方言の活用と…

上林葵(2019.8)関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示

上林葵(2019.8)「関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示」『日本語の研究』15(2) 要点 関西方言のジャはヤと類似するが、ジャは限定的なモーダルな働きを強く帯びる働きを持つ (本の所有者が誰かを単に尋ねられて)そ…

木部暢子(2006.5)九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」

木部暢子(2006.5)「九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」」『筑紫語学論叢Ⅱ』風間書房 要点 長崎で、能力可能だけでなく外的条件可能にも、労力を必要とする場合に限ってキルが使われる(木部2004)ことについて考える 長崎市…

木部暢子(2004.3)九州の可能表現の諸相:体系と歴史

木部暢子(2004.3)「九州の可能表現の諸相:体系と歴史」『国語国文薩摩路』48 要点 九州方言の可能表現は、~キルと~(ラ)ルルの2種類 キルは能力可能、ラルルは外的条件可能 (2~4節、概観・調査概要・問題点) 久留米市・大牟田市・熊本市:キルが能…

柚木靖史(2020.2)角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)

柚木靖史(2020.2)「角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)」『広島女学院大学論集』67 要点 広島の郷土資料の角筆を見ることで、近世の安芸・備後地方の口頭語の実態を考えたい (10…

平塚雄亮(2019.7)甑島里方言のbasi

平塚雄亮(2019.7)「甑島里方言のbasi」『阪大社会言語学研究ノート』16 要点 九州方言でとりたて助詞的に使われる basi は、里方言では形式名詞的にも使われる tanpoo=ni=basi ita=to=jaroo / 田んぼにでも行ったんだろう sir-an basi=n goto / 知らないわ…

小西いずみ(2011.7)出雲方言における「一段動詞のラ行五段化」に関する覚書

小西いずみ(2011.7)「出雲方言における「一段動詞のラ行五段化」に関する覚書」『論叢 国語教育学』復刊2 要点 出雲方言におけるラ行五段化(見る:未然形ミラン、命令形ミレ)を記述すると、 否定・命令・使役・意志形と、とりたて否定形ミリャーシェン・…

福嶋秩子(2017.5)準体助詞の分布と変化

福嶋秩子(2017.5)「準体助詞の分布と変化」大西拓一郎編『空間と時間の中の方言:ことばの変化は方言地図にどう現れるか』朝倉書店 要点 FPJDとGAJの準体助詞の分布と変化を概観し、新潟方言のイガンダベ(行くのだろう)について考える GAJとFPJDの準体助…