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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

方言

西尾純二(2002)秋田県鳥海町方言の推量表現形式「ガロ」と関連形式の用法

西尾純二(2002)「秋田県鳥海町方言の推量表現形式「ガロ」と関連形式の用法」『消滅に瀕した方言語法の緊急調査研究(2)』 要点 推量形式ガロと周辺形式について、 現在の肯定・否定の推量には多くがガロ、過去推量にはタロ・ダロが回答される 形容動詞を…

村中淑子(2015.3)明治小説にみる京都方言:清水紫琴「心の鬼」(明治30年)を資料として

村中淑子(2015.3)「明治小説にみる京都方言:清水紫琴「心の鬼」(明治30年)を資料として」『現象と秩序』2. 要点 清水紫琴(1868-1933)による関西方言小説「心の鬼」(文芸倶楽部3(2)、M30)が、明治期の京都方言資料として有用であることを示す 待遇表…

久保薗愛(2022.1)鹿児島方言史における準体助詞の発達

久保薗愛(2022.1)「鹿児島方言史における準体助詞の発達」『中部日本・日本語学研究論集』和泉書院. 要点 鹿児島方言の準体助詞トの発達について、以下の5点を主張する 18C初頭(ロシア資料)にトは見られるが、コト準体、~ニの環境ではゼロ準体も見受け…

村上謙(2010.10)明治大正期関西弁資料としての上司小剣作品群の紹介および否定表現形式を用いた資料性の検討

村上謙(2010.10)「明治大正期関西弁資料としての上司小剣作品群の紹介および否定表現形式を用いた資料性の検討」『近代語研究15』 武蔵野書院. 要点 上司小剣(1874-1948)の『鱧の皮』などの関西弁小説が、落語SPレコードと同様、近代関西弁資料として有…

櫻井真美(2002.11)山形市方言の条件表現形式「ドギ」

櫻井真美(2002.11)「山形市方言の条件表現形式「ドギ」」『言語科学論集』6. http://hdl.handle.net/10097/30744 要点 山形市方言のドギ(時)は、仮説的用法を持つ 疲れているトキ、もう寝なさい。(1)/ツカレッタドギ、モウネロー。(1)' 本来のドギ…

大西拓一郎(1999.11)新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって

大西拓一郎(1999.11)「新しい方言と古い方言の全国分布:ナンダ・ナカッタと打消過去の表現をめぐって」『日本語学』18(13) GAJ151の打消過去の分布と中央語史を比較したい p.100 GAJ151「行かなかった」では、 東にナカッタ、西にナンダ ナンダ類を囲むよ…

藤原あかね(2021.3)静岡県中部方言における推量表現「ラ」「ダラ」について

藤原あかね(2021.3)「静岡県中部方言における推量表現「ラ」「ダラ」について」『阪大社会言語学研究ノート』17. 要点 先行研究の指摘と話者(若年層)の内省とのズレ4点を踏まえつつラ・ダラの用法を記述したい 現在は、ズラ・ダズラ・ツラが使用されな…

ローレンス・ウエイン(2011.10)琉球語から見た日本語希求形式=イタ=の文法化経路

ローレンス・ウエイン(2011.10)「琉球語から見た日本語希求形式=イタ=の文法化経路」『日本語の研究』7(4). 要点 本土日本語の=イタシ(タシ)には以下の経路が想定されているが、2つ目の変化は類型的には支持されない 痛し > 甚し > 希望 琉球語鳩間…

kepler.gl でGAJのデータをお手軽に可視化する

前提 WALS Online みたいなことが、方言文法全国地図(GAJ)でもできたらいいなあと思った。例えば、ズームできたり、クリックすると地点情報が出てきたり、フィルタがかけられたりしたらなんだか嬉しい。 kepler.gl というUberが公開しているオープンソース…

小田佐智子(2016.3)岐阜方言の原因・理由に表れるモンデ

小田佐智子(2016.3)「岐阜方言の原因・理由に表れるモンデ」『阪大社会言語学研究ノート』14 要点 岐阜のモンデの形式的・意味的特徴の記述、 形式的特徴、 デ・モンデのいずれも終止形接続(あるデ/モンデ)だが、モンデは連体形接続(簡単なモンデ)も…

金沢裕之(1995.5)可能の副詞「ヨー」をめぐって

金沢裕之(1995.5)「可能の副詞「ヨー」をめぐって」『国語国文』64(5) 要点 関西~中国・四国のヨーの歴史を明らかにしたい 江戸後期以降の調査、 戯作にヨーの例はなく(一荷堂半水作に偏るため?)、エは洒落本にのみ例あり 能力可能、外的条件可能、心…

三宅俊浩(2019.12)近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立

三宅俊浩(2019.12)「近世後期尾張周辺方言におけるラ抜き言葉の成立」『日本語の研究』15(3) 要点 尾張のラ抜きについて論じたい 使用率の高い中国四国・東海東山が不連続であり、京阪・東京では使用率が低く、中央語史の観察だけでは成立過程の解明が困難…

内間直仁(1985.3)係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に

内間直仁(1985.3)「係り結びのかかりの弱まり:琉球方言の係り結びを中心に」『沖縄文化研究』11 要点 中央語の係り結び衰退の要因は明らかでないが、琉球語が示唆する点がある 琉球の活用形について2点、 奄美・沖縄では終止形、連体形、du係結形が概ね区…

市岡香代(2005.3)栃木県岩舟町方言における意志・推量表現形式「べ」の用法

市岡香代(2005.3)「栃木県岩舟町方言における意志・推量表現形式「べ」の用法」『日本語研究(都立大)』25 要点 ベ一形式で意志・推量を表す地域と意志にベ・推量にダンベを分担する地域があり、標題地域はその境界にあたる 形態的特徴、 名詞・形容動詞…

高木千恵(2005.3)大阪方言の述語否定形式と否定疑問文:「〜コトナイ」を中心に

高木千恵(2005.3)「大阪方言の述語否定形式と否定疑問文:「〜コトナイ」を中心に」『阪大社会言語学研究ノート』7 要点 大阪方言における分析的な否定形式コトナイと、否定疑問形式コトナイカについて考える 述語の否定形式は以下の通りで、 p.74 これら…

舩木礼子(1999)意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論

舩木礼子(1999)「意志・推量形式「べー」の対照:用法変化の推論」『待兼山論叢 日本学篇』33 要点 ①福島県喜多方、②宮城県鳴瀬、③秋田県大館、④秋田県五城目、⑤静岡県沼津、⑥兵庫県稲美の6地点のベーを対照する 接続において、 ①②③④はほぼ一段・カ変・サ…

木部暢子(2019.3)諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差

木部暢子(2019.3)「諸方言コーパスに見るモダリティ形式のバリエーション:推量表現の地域差」田窪行則・野田尚史(編)『データに基づく日本語のモダリティ研究』くろしお出版 要点 COJADSモニター版を使って諸方言の推量表現を整理する 述語のタイプ(名…

森勇太(2018.5)近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に

森勇太(2018.5)「近世・近代における授受補助動詞表現の運用と東西差:申し出表現を中心に」小林隆(編)『コミュニケーションの方言学』ひつじ書房 要点 申し出表現の地理的なバリエーションを考える (その荷物は私が)持たしてもらいます(GAJ320・京都…

津田智史(2015.9)トル形の表す意味

津田智史(2015.9)「トル形の表す意味」『方言の研究1』ひつじ書房 要点 トルは主にアスペクト的な結果の局面を表すとされるが、「結果」を基本的な意味とせず、オルの意味から解釈されるべきである 結論、トル形は「動詞の表す事態が起こり、何らかの形で…

村上謙(2012.3)明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する

村上謙(2012.3)「明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する」『近代語研究』21 要点 否定辞ヘンの成立にはハセヌ→ャセヌ→ャセン→ャヘン→ヘンが想定されるが、以下の4点の問題がある 成立要因が問われていない そもそも音変化説…

駒走昭二(2017.10)ゴンザ資料におけるカス型動詞

駒走昭二(2017.10)「ゴンザ資料におけるカス型動詞」『日本語の研究』13(4) 要点 ゴンザ資料のカス型動詞を取り上げ、18C薩隅での特徴を整理する 形態的特徴、 akasuが多い(中世の中央語と同様) 半数がラカス 音節数は4音節が多く(中央語は5音節)、2音…

小西いずみ(2013.10)西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化

小西いずみ(2013.10)「西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化」藤田保幸(編)『形式語研究論集』和泉書院 要点 トイウのテ形がト同様の働きをする現象について考える ヤメタイユーテ ユータ(富山市・やめたいと言った) データ、 富山…

木部暢子(2020.3)九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより

木部暢子(2020.3)「九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより」『坂口至教授退職記念日本語論集』創想社 要点 九州のゴトアルが様態と希望を表すことに対する2つの従来説 形態的特徴と意味の結びつきが排他的に決まる(ウゴトアル→希望/連体形+ゴ…

彦坂佳宣(2020.3)一・二段活用のラ行五段化における使役形の動向

彦坂佳宣(2020.3)「一・二段活用のラ行五段化における使役形の動向」『国語語彙史の研究』39 要点 「他の活用とやや異なる面のある」使役形の五段化について考える 個別的要因(九州南部の音変化の激しさ、東北のレバの優勢さ、新潟のローの誘引など)の関…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(動詞活用における方言形成史のアウトライン)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆2002「日本語方言の歴史」江端義夫編『朝倉日本語講座 10 方言』朝倉書店) 要点 これまでの3点をもとに、動詞活用の歴史を整理する 方言と活用の関係2種 A …

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(一段活用動詞などに見られるラ行五段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1996「動詞活用におけるラ行五段化傾向の地理的分布」『東北大学文学部研究年報』45) 要点 オキル・ミル・アケル・ネル・スル・クル×否定・使役・意志・過…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(二段活用動詞などに見られる一段化傾向の概観)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1997「動詞活用における一段化傾向の地理的分布」加藤正信編『日本語の歴史地理構造』明治書院) 要点 方言における一段化の問題について考える ① いわゆる…

小林隆(2004)動詞活用の歴史:言語体系の変遷(動詞「起きる」を例にしたケーススタディ)

小林隆(2004)「動詞活用の歴史:言語体系の変遷」『方言学的日本語史の方法』ひつじ書房 (小林隆1994「活用の方言分布と歴史:「方言文法全国地図」の「起きる」について」『北海道方言研究会20周年記念論文集 ことばの世界』) 要点 日本語方言の活用と…

上林葵(2019.8)関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示

上林葵(2019.8)「関西方言における終助詞的断定辞「ジャ」の機能:マイナス感情・評価の提示」『日本語の研究』15(2) 要点 関西方言のジャはヤと類似するが、ジャは限定的なモーダルな働きを強く帯びる働きを持つ (本の所有者が誰かを単に尋ねられて)そ…

木部暢子(2006.5)九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」

木部暢子(2006.5)「九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」」『筑紫語学論叢Ⅱ』風間書房 要点 長崎で、能力可能だけでなく外的条件可能にも、労力を必要とする場合に限ってキルが使われる(木部2004)ことについて考える 長崎市…