ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

岩間智昭(2022.2)近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に

岩間智昭(2022.2)「近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に」『国文学論叢』67.

要点

  • 以下の3点の分析より、『浄土勧化文選』(宝暦11[1761]刊)が、「「非中立的」な表現を内包する」資料であり、文語性の高い資料であることを主張する
    • 従来、森岡健二勧化本の口語性を指摘し、それが「中立的な口語」であることを指摘することなどを承ける
  • ① 断定の助動詞にダの例がなく、上方で用いられる(作者の智洞が学を積んだ地である)ヂャの例しかない
  • ② 原因・理由表現にサカイがなく、ホドニ・ヨリテが使用される
    • 後件には命令・禁止が来る例が多く、これは勧化本が「説教の「場」を活写したものであるがゆえ」のことである
    • 以上2点から、地域的・位相的に偏りがあることが分かる
  • ③ ハ行動詞連用形はほぼウ音便化する一方、形容詞連用形は非音便形の方が多い
    • このとき、仮定と連用形中止においては非音便形が多いこと(矢島1986)を参考にすると、勧化本も同様の傾向を示し、
    • そもそもの連用形中止がテよりも多いことは、勧化本の文語性の強さを示す*1

雑記

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*1:ここは音便形がどうかという議論から離れているのと、連用形中止イコール文語とは言えないだろうから、話が飛躍している印象