ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

資料論

樋渡登(2005.6)洞門抄物から見た疑問詞疑問文について

樋渡登(2005.6)「洞門抄物から見た疑問詞疑問文について」『日本近代語研究4』ひつじ書房(『洞門抄物による近世語の研究』おうふう を参照). 要点 外山(1957)、矢島(1997, 2002)を踏まえつつ、洞門抄物の疑問詞疑問文について検討する。 ① 体言性述…

矢島正浩(2002.3)疑問詞疑問文文末ゾの使用よりみた近松世話浄瑠璃

矢島正浩(2002.3)「疑問詞疑問文文末ゾの使用よりみた近松世話浄瑠璃」『日本近代語研究3』ひつじ書房. 要点 近松世話浄瑠璃の疑問詞疑問文におけるゾの使用状況と、近松世話浄瑠璃の資料性についても考える。 外山(1957)と矢島(1997)を踏まえる。 hjl…

小林賢次(1996.10)大蔵流虎光本狂言集における疑問詞疑問文:終助詞「ゾ」を中心に

小林賢次(1996.10)「大蔵流虎光本狂言集における疑問詞疑問文:終助詞「ゾ」を中心に」『日本語研究領域の視点 下巻』明治書院. 要点 虎光本(1817写)の諸本の異同について、疑問文のゾに注目して比較する。 古典文庫本の底本・山岸清斎文政6書写本と、対…

田中志瑞子(2007.3)伝三条西実隆筆『毛詩国風篇聞書』について

田中志瑞子(2007.3)「伝三条西実隆筆『毛詩国風篇聞書』について」『訓点語と訓点資料』118. 要点 景徐周麟講、清原宣賢聞書による『毛詩国風篇聞書』(以下、『聞書』)の性格と、写真・翻刻。 まず、概括的に。 『左伝』の抄物との合冊。 永正7[1510]…

野沢勝夫(1993.4)妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として

野沢勝夫(1993.4)「妙一記念館本仮名書き法華経 小考:その成立時代を中心として」『妙一記念館本仮名書き法華経 研究編』霊友会. 要点 以下の8点の比較により、妙一本が足利本に先んずるものであることを主張する。足利本は1330写の識語を持つが、妙一本…

田中志瑞子(2008.3)『毛詩聴塵』の成立:『聞書』の利用を通じて

田中志瑞子(2008.3)「『毛詩聴塵』の成立:『聞書』の利用を通じて」『訓点語と訓点資料』120. 要点 『毛詩国風篇聞書』(以下『聞書』)と『毛詩聴塵』との間には極めて類似する箇所があり、宣賢は『聴塵』の参考資料として『聞書』の記述も取り込んだも…

大坪併治(2003.9)石山寺本『大智度論』天安点における文法上の諸問題

大坪併治(2003.9)「石山寺本『大智度論』天安点における文法上の諸問題」『訓点語と訓点資料』111. 要点 石山寺本『大智度論』天安点には、以下の文法上問題のある点がある。 動詞:サ変+キにおいて、セシ・セシカでなく、シシ・シシカとする場合がある。…

中野遙(2019.9)キリシタン版『日葡辞書』の「id est」について

中野遙(2019.9)「キリシタン版『日葡辞書』の「id est」について」『訓点語と訓点資料』143. 要点 日葡辞書の語釈に付される id est (すなわち、以下{IE})注記は、以下の構造を持ち、 注記対象の語(D)、注記する側の語(E) Xeidan.(誓断) i. Chic…

鈴木博(1982.3)『勅規桃源鈔』の国語学的考察

鈴木博(1982.3)「『勅規桃源鈔』の国語学的考察」『滋賀大学教育学部紀要 人文・社会・教育科学』31. 要点 両足院本の『勅規桃源鈔』(雲章一慶講、桃源瑞山1462抄)の資料性について。 (「諸本の概略」は原論文参照) コソの結びにサフラウメが多く現れ…

高見三郎(2001.1)国語資料としての『四河入海』

高見三郎(2001.1)「国語資料としての『四河入海』」『国語国文』70(1). 要点 四河入海には笑雲清三自筆本(東福寺本)と、古活字版の国会本(抄物大系の底本)が知られ、この他に、東福寺本に近い書き入れを有する東洋文庫本、内閣文庫本などがある。 内閣…

鈴木博(1977.12)医方大成論抄における用語の違いについて

鈴木博(1977.12)「医方大成論抄における用語の違いについて」『国語学』111. 要点 医方大成論抄の東大本・京大本の2本の間に見られる相違について。 京大本には「安芸道本」、東大本には「済庵」の奥書がある。 東大本・京大本は転写の関係になく、姉妹関…

金沢裕之(1991.12)明治期大阪語資料としての落語速記本とSPレコード:指定表現を中心に

金沢裕之(1991.12)「明治期大阪語資料としての落語速記本とSPレコード:指定表現を中心に」『国語学』167. 要点 明治期中期の速記本、末期の落語SPレコードが、明治期大阪語の資料として有用であることを示す。 コピュラのヤを事例とすると、 近世末期(穴…

菅原範夫(1989.12)栄花物語の口語的一側面:連体形・巳然形終止などから

菅原範夫(1989.12)「栄花物語の口語的一側面:連体形・巳然形終止などから」『高知大国文』20. 要点 栄花物語には以下のような口語的(中世的)要素が認められる。 地の文のハベリの使用:御おぼえも日頃におとりにけりとぞ聞こえ侍し。 筆録者が読者に対…

常盤智子(2013.10)富田源太郎著『英和婦人用会話』にみられる助動詞「ウ」+終助詞「ワ」について

常盤智子(2013.10)「富田源太郎著『英和婦人用会話』にみられる助動詞「ウ」+終助詞「ワ」について」『近代語研究17』武蔵野書院. 要点 富田源太郎(1867?-1917)による英学会話書『英和婦人用会話』(1914刊)は、当時の口頭語が反映されるものと見られ…

村上謙(2013.12)明治大正期関西弁資料としての曽我廼家五郎喜劇脚本群

村上謙(2013.12)「明治大正期関西弁資料としての曽我廼家五郎喜劇脚本群」『埼玉大学国語教育論叢』16. 要点 喜劇俳優兼脚本家の曽我廼家五郎(1877生)による関西弁喜劇脚本群の資料性について検討する p.5 全体的な資料性について、 五郎作品群には、関…

岩間智昭(2022.2)近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に

岩間智昭(2022.2)「近世口語資料としての近世中期勧化本試論:菅原智洞作『浄土勧化文選』を対象に」『国文学論叢』67. 要点 以下の3点の分析より、『浄土勧化文選』(宝暦11[1761]刊)が、「「非中立的」な表現を内包する」資料であり、文語性の高い資…

矢島正浩(1989.1)近松世話物における断定ナリ終止形残存の意義

矢島正浩(1989.1)「近松世話物における断定ナリ終止形残存の意義」『文芸研究 文芸・言語・思想』120. 要点 旧形式ナリを以下のように分類すると、 A 文を完結させ得ない(いわゆる並列) B 文を完結させ得る イ 話手の判断の加わる余地無し ロ 話手の判断…

小林賢次(1987)『大蔵虎寛本能狂言』における衍字・脱字の校訂について

小林賢次(1987)「『大蔵虎寛本能狂言』における衍字・脱字の校訂について」『近代語研究7』武蔵野書院. 要点 笹野堅校訂『大蔵虎寛本 能狂言』には、「衍字や脱字を想定しなくてもよさそうなもの」や、「原文の形を尊重すべきだと思われる例も混じっている…

村中淑子(2015.3)明治小説にみる京都方言:清水紫琴「心の鬼」(明治30年)を資料として

村中淑子(2015.3)「明治小説にみる京都方言:清水紫琴「心の鬼」(明治30年)を資料として」『現象と秩序』2. 要点 清水紫琴(1868-1933)による関西方言小説「心の鬼」(文芸倶楽部3(2)、M30)が、明治期の京都方言資料として有用であることを示す 待遇表…

村上謙(2010.10)明治大正期関西弁資料としての上司小剣作品群の紹介および否定表現形式を用いた資料性の検討

村上謙(2010.10)「明治大正期関西弁資料としての上司小剣作品群の紹介および否定表現形式を用いた資料性の検討」『近代語研究15』 武蔵野書院. 要点 上司小剣(1874-1948)の『鱧の皮』などの関西弁小説が、落語SPレコードと同様、近代関西弁資料として有…

月本雅幸(1992.11)院政期の訓点資料における助動詞

月本雅幸(1992.11)「院政期の訓点資料における助動詞」『国語と国文学』69(11) 要点 平安初期訓点資料に比して院政期訓点資料が活用されることは少ないが、価値が低いとは言い切れない 当時の口語を含む部分がありそうな一方で、移点などによる年代的重層…

古田龍啓(2020.9)清原良賢講『論語抄』の諸本について

古田龍啓(2020.9)「清原良賢講『論語抄』の諸本について」『訓点語と訓点資料』145 要点 東山本の良賢抄は『応永27年本論語抄』としてよく使われるが、誤写の問題については看過されている 東山本、米沢本、大東急本、両足院本と、良賢抄の書き入れがある…

神戸和昭(1999.10)黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に

神戸和昭(1999.10)「黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に」『近代語研究』10 要点 「必ずしも明確になっていない」黄表紙の資料性について考える 作者・版元が同一、刊年も近く、主要登場人物も借用する、以下2作品…

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1) 要点 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える 二人の関係について、 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高…

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7) 要点 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差…

小島和(2011.1)『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に

小島和(2011.1)「『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に」『上智大学国文学論集』 要点 天草平家の地の文が対話による語りであることに注目する 喜一は右馬に対して「こなた」を使い、右馬は喜一に「そなた」を使う この差…

鶴橋俊宏(2013.1)人情本の推量表現(1)文政期人情本における推量表現

鶴橋俊宏(2013.1)人情本の推量表現(1)「文政期人情本における推量表現」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出2013『言語文化研究』11 要点 推量表現史を見つつ初期人情本の資料性についても考える 特にダロウ・ノダロウについてここまで分かったこと…

常盤智子(2018.4)幕末明治期における日英対訳会話書の日本語:数量の多さを表す句との対応から

常盤智子(2018.4)「幕末明治期における日英対訳会話書の日本語:数量の多さを表す句との対応から」『日本語の研究』14(2) 要点 翻訳から生じたとされる「Nの多く」に注目し、... of N がどのような日本語と対応しているかを調査する We had trusted many o…

柚木靖史(2020.2)角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)

柚木靖史(2020.2)「角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)」『広島女学院大学論集』67 要点 広島の郷土資料の角筆を見ることで、近世の安芸・備後地方の口頭語の実態を考えたい (10…

伊藤雅光(1982.2)『古今集遠鏡』・『古今和歌集鄙言』間の剽窃問題について

伊藤雅光(1982.2)「『古今集遠鏡』・『古今和歌集鄙言』間の剽窃問題について」『国語研究(国学院)』45 要点 『鄙言』による『遠鏡』の剽窃について考える 遠鏡は寛政5には成立しており、刊行作業は千秋側の事情により、やや遅れる 寛政8の書簡から、宣…