ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

資料論

月本雅幸(1992.11)院政期の訓点資料における助動詞

月本雅幸(1992.11)「院政期の訓点資料における助動詞」『国語と国文学』69(11) 要点 平安初期訓点資料に比して院政期訓点資料が活用されることは少ないが、価値が低いとは言い切れない 当時の口語を含む部分がありそうな一方で、移点などによる年代的重層…

古田龍啓(2020.9)清原良賢講『論語抄』の諸本について

古田龍啓(2020.9)「清原良賢講『論語抄』の諸本について」『訓点語と訓点資料』145 要点 東山本の良賢抄は『応永27年本論語抄』としてよく使われるが、誤写の問題については看過されている 東山本、米沢本、大東急本、両足院本と、良賢抄の書き入れがある…

神戸和昭(1999.10)黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に

神戸和昭(1999.10)「黄表紙会話文の口語性について:山東京伝作『江戸生艶気樺焼』の検討を中心に」『近代語研究』10 要点 「必ずしも明確になっていない」黄表紙の資料性について考える 作者・版元が同一、刊年も近く、主要登場人物も借用する、以下2作品…

安田章(2006.1)アドリブの意味

安田章(2006.1)「アドリブの意味」『国語国文』75(1) 要点 天草平家の2%程度、右馬、喜一の、平家とは関係のない対話部分(アドリブ)がある。この資料性と意味について考える 二人の関係について、 喜一→右馬では、敬語動詞・(サ)セラルルなどの「最高…

丸田博之(1994.7)ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について

丸田博之(1994.7)「ロドリゲス編「日本大文典」に於ける日本人の関与について」『国語国文』63(7) 要点 大文典には、イエズス会の方針と食い違う編集態度が見られる キリシタンが禁止事項とする起請文が収められる 起請文や願書が、日本の神仏をデウスに差…

小島和(2011.1)『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に

小島和(2011.1)「『天草版平家物語』に用いられる待遇表現について:「地の文」を中心に」『上智大学国文学論集』 要点 天草平家の地の文が対話による語りであることに注目する 喜一は右馬に対して「こなた」を使い、右馬は喜一に「そなた」を使う この差…

鶴橋俊宏(2013.1)人情本の推量表現(1)文政期人情本における推量表現

鶴橋俊宏(2013.1)人情本の推量表現(1)「文政期人情本における推量表現」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出2013『言語文化研究』11 要点 推量表現史を見つつ初期人情本の資料性についても考える 特にダロウ・ノダロウについてここまで分かったこと…

常盤智子(2018.4)幕末明治期における日英対訳会話書の日本語:数量の多さを表す句との対応から

常盤智子(2018.4)「幕末明治期における日英対訳会話書の日本語:数量の多さを表す句との対応から」『日本語の研究』14(2) 要点 翻訳から生じたとされる「Nの多く」に注目し、... of N がどのような日本語と対応しているかを調査する We had trusted many o…

柚木靖史(2020.2)角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)

柚木靖史(2020.2)「角筆文献資料から安芸・備後地方の近世方言を探る:広島県立文書館蔵の角筆文献調査(二〇一四年-二〇一六年)」『広島女学院大学論集』67 要点 広島の郷土資料の角筆を見ることで、近世の安芸・備後地方の口頭語の実態を考えたい (10…

伊藤雅光(1982.2)『古今集遠鏡』・『古今和歌集鄙言』間の剽窃問題について

伊藤雅光(1982.2)「『古今集遠鏡』・『古今和歌集鄙言』間の剽窃問題について」『国語研究(国学院)』45 要点 『鄙言』による『遠鏡』の剽窃について考える 遠鏡は寛政5には成立しており、刊行作業は千秋側の事情により、やや遅れる 寛政8の書簡から、宣…

上野左絵(2012.3)『古今和歌集鄙言』里言における「ゲナ」と「サウナ」

上野左絵(2012.3)「『古今和歌集鄙言』里言における「ゲナ」と「サウナ」」『十文字国文』18 要点 「つねのことは」「時俗のくちふり」をうつすという方針の『鄙言』(1796刊)が、あゆひ抄や遠鏡よりも自然な口語を得示すのではないか、という予測のもと…

山本真吾(1994.5)延慶本平家物語に於ける古代語の用法について:「侍り」「めり」「まほし」を軸として

山本真吾(1994.5)「延慶本平家物語に於ける古代語の用法について:「侍り」「めり」「まほし」を軸として」水原一編『延慶本平家物語考証3』新典社 要点 延慶本における「新しい語法」が注目されがちだが、「古い語法がどうなっているか」の検討も併せて行…

山本真吾(2010.12)平家物語諸本と中世語:延慶本の言語年代をめぐって

山本真吾(2010.12)「平家物語諸本と中世語:延慶本の言語年代をめぐって」『国文論叢(神戸大学)』43 要点 延慶本平家は鎌倉時代語資料とはされるが、転写は応永まで下るので、当時の言語現象を含む可能性がある このことを踏まえて、延慶本の資料性を、…

坂口至(1990.3)噺本に見る近世後期上方語の諸相

坂口至(1990.3)「噺本に見る近世後期上方語の諸相」『文学部論叢(熊本大学)』31 前提 後期上方語の資料としてあまり活用されてこなかった後期噺本の資料性を考えたい 活用 二段活用の一段化:自立語では洒落本と同等で、付属語はやや少ない ラ行下二段の…

坂詰力治(1995.11)中世語法より見た『発心集』:国語資料としての性格

坂詰力治(1995.11)「中世語法より見た『発心集』:国語資料としての性格」『国語と国文学』72-11 前提 発心集(鎌倉成立)の性格について考える 慶安4[1651]刊の版本による 発心集の文法現象 二段活用の一段化と見られるものに「朝ニサカヘル家」の例が…

池上秋彦(1995.8)「五大力恋緘」の語法・緒論:上方本と江戸本を比較して

池上秋彦(1995.8)「「五大力恋緘」の語法・緒論:上方本と江戸本を比較して」『国語と国文学』72(8) 前提 初世並木五瓶「五大力恋緘」の、大阪初演(1794)と江戸初演(1975)の台本の比較を通して、そこに現れる上方・江戸の語法差を記述したい 動詞 サ行…

高見三郎(1990.6)『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」

高見三郎(1990.6)「『杜詩続翠抄』の「マジイ」「ベイ」」『女子大国文』107 要点 杜詩続翠抄にはマジイがある程度用いられており、ベイも固定せずに用いられている 前提 杜詩続翠抄はナリ体だが、ナリ・ゾは口語性の一つの目安に過ぎないので、マジイ・ベ…

高見三郎(1977.3)杜詩の抄:杜詩続翠抄と杜詩抄

高見三郎(1977.3)「杜詩の抄:杜詩続翠抄と杜詩抄」『山辺道』21 諸本 杜詩続翠抄 両足院蔵「杜詩続翠抄」 国会図書館蔵「杜詩続翠鈔」 杜詩抄 両足院蔵「杜詩抄」 足利学校図書館蔵「杜詩抄」 原典は『集千家註批点杜工部詩集』 続翠抄 両足院本続翠抄は…

山田巌・木村晟(1976.2)『本則抄』について

山田巌・木村晟(1976.2)「『本則抄』について」『駒沢国文』13 要点 駒沢大本『本則抄』の言語的特徴について 本則抄 禅林類聚からの抽出・加注の東国抄物 講述者は「春夕」、「春積」とあり、 位作山陽林寺二世の盛南舜奭(-1541)か、 梅龍山東竹院四世…

北原保雄・大倉浩(1997)言語資料としての『外五十番』

北原保雄・大倉浩(1997)「言語資料としての『外五十番』」『狂言記外五十番の研究』勉誠社 前提として第2章「所収曲について」 外五十番は複数台本に依拠している 一部は虎明本に近く、古態を示すが、 一部は和泉流三宅家の三百番集本に近い、新しい面も見…

北原保雄・大倉浩(1997)『狂言記外五十番』について

北原保雄・大倉浩(1997)「『狂言記外五十番』について」『狂言記外五十番の研究』勉誠社*1 要点 狂言記他3種と性格の異なる外五十番と、他3種の関係について 狂言記の刊行と性格 以下の順に刊行されている p.540 特筆すべきこととして、 外五十番と続狂言…

北原保雄・吉見孝夫(1987)言語資料としての『狂言記拾遺』

北原保雄・吉見孝夫(1987)「言語資料としての『狂言記拾遺』」『狂言記拾遺の研究』勉誠社 要点 狂言記拾遺(1730刊)の言語的特徴と狂言記内での位置付けについて 注意点と流派的な位置付け まず、狂言記が読み物として刊行されたことに留意すべき 「これ…

北原保雄・小林賢次(1985)言語資料としての『続狂言記』(条件表現の節)

北原保雄・小林賢次(1985)「言語資料としての『続狂言記』」『続狂言記の研究』勉誠社 の、昨日の続き 仮定表現 この頃の順接仮定条件表現の重要な点3つ 1 未然形+ばの衰退 2 ならば・たらばの発達 3 仮定の「已然形+ば」の発達 1 未然形+ばの衰退につ…

北原保雄・小林賢次(1985)言語資料としての『続狂言記』

北原保雄・小林賢次(1985)「言語資料としての『続狂言記』」『続狂言記の研究』勉誠社*1 要点 『続狂言記』(1700刊)の言語的特徴について 四つ仮名・開合 正篇同様乱れているが、ただ乱れているのではなく、一定の表記意識のもとにある 正篇で「ぢや」と…

北原保雄・大倉浩(1983)言語資料としての『狂言記正篇』

北原保雄・大倉浩(1983)「言語資料としての『狂言記正篇』」『狂言記の研究』勉誠社*1 要点 版本『狂言記』(1660刊)の言語的特徴について 四つ仮名・開合 四つ仮名・開合に混乱がある 字[じ]がたりませぬ/ぢがたりませぬ 連濁の場合ですら間違ってお…

吉田永弘(2012.3)平家物語と日本語史

吉田永弘(2012.3)「平家物語と日本語史」『愛知県立大学説林』60 要点 原拠本と天草版との対照による研究方法のあり方について 前提 一般的な諸本系統図のモデル(図1)は、書写過程以外における「作られた本文」を持つ異本の発生のある平家においては適用…

吉田永弘(2015.5)『源平盛衰記』語法研究の視点

吉田永弘(2015.5)「『源平盛衰記』語法研究の視点」松尾葦江『文化現象としての源平盛衰記』笠間書院 要点 延慶本・覚一本との比較により、源平盛衰記の後代的言語現象を探る 前提 源平盛衰記は14C前半成立だが、現存伝本は16C中頃以降成立 慶長古活字版に…

浅川哲也(2014.6)江戸時代末期人情本の活字化資料にみられる諸問題:「あるのです」は「あるです」

浅川哲也(2014.6)「江戸時代末期人情本の活字化資料にみられる諸問題:「あるのです」は「あるです」」『日本語研究(首都大学東京)』34 問題 人情本の活字化資料には人情本刊行会版があるが、その本文は問題を孕む 版本本文と人情本刊行会版の本文を比較…

乾善彦(2011.3)『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文

乾善彦(2011.3)「『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文」坂詰力治編『言語変化の分析と理論』おうふう 要点 三宝絵の諸本の関係性と、それを通して見る和漢混淆文のあり方について 前提 源為憲撰『三宝絵』(永観2[984]成)三伝本 平仮名本 関戸本(保安元[1…

吉田永弘(2001.3)平家物語のホドニ:語法の新旧

吉田永弘(2001.3)「平家物語のホドニ:語法の新旧」『国語研究』64 要点 吉田(2000)のホドニの用法を基準にした、平家諸本の位置付けの検討 hjl.hatenablog.com 前提 吉田(2000)によるホドニの三段階 平安において、前件と後件が時間的に重なる用法(…