ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

山田潔(2001.9)助動詞「らう」とその複合辞(3)複合助動詞「つらう」の用法

山田潔(2001.9)「複合助動詞「つらう」の用法」『玉塵抄の語法』清文堂出版、初出1995

要点

  • 室町のツラウについて考える
    • 斯道本平家のケンは天草版ではツラウに交替する
  • ケンの用法を以下の3種に分類すると、ケン→ツラウの例はA, Bしか見られない(木下書子1993)
    • A 過去の事柄自体の推量
    • B 過去の事柄の原因・理由・事情などの推量
    • C 過去の事柄の伝聞・婉曲
  • B, Cついて、
    • このうちBのケンは全てはさみこみで、疑問詞やヤと呼応し、しかも多くはツラウよりも「~たか」で置き換えられる
    • Cのケンは連体法・準体法にしか見られないので、それが終止用法でしか用いられないツラウの意味と相容れなかったのであろう
  • Aの場合、
    • ケンは終止法で、対応するツラウもやはり終止法である
    • ケンに対応するツラウ10例中7例がサコソと呼応することから、単なる過去推量ではなく、「~たのだろう」のような言語主体の確信も含意すると考えられる
    • 残り3例はヤ(詠嘆)と呼応する
  • まとめ、
    • ツラウは「過去の事柄について、疑いもなくそうであったのだという言語主体の確信」を表し、
    • ときに、「その過去の事柄に対する詠嘆の気持」までも含意すると考えられる
  • 玉塵抄も同様の傾向を示す
    • 全て文末終止の例ではさみこみの例がなく、コソ~ツラウが多数を占める
    • タラウは連体修飾が一般(cf. 大文典)で、文末終止の例は稀である
  • ツラウは構文上・意味上著しく固定化しており、これがツラウの衰退する原因にもなっていると考える

雑記

  • この国の学術の未来、暗え~